世界に紅茶を知らしめた「リプトン」のすごい手法 今のSNSに通じる抜群のマーケティング力

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それだけで終わらないのがリプトンです。彼はこのアイディアをもう一捻りしました。次に痩せた人たちと太った人たちをアルバイトとして雇い、痩せた人には「私はリプトン店に行きます」、太った人には「私はリプトンの店から出てきました」というプラカードを持たせ、街を練り歩かせたのです。予想どおり、このパフォーマンスはさらに大きな話題を呼び、客が殺到しました。

子どもから大人まで、「次はどんなサプライズが登場するのだろう」と待ち望むようになり、リプトンはそんな期待を遥かに上回るプロモーションを打ち出し、街中の人たちを喜ばせました。

「広告とはユーモラスであるべきで、それを見てクスっと笑いを誘い、ついつい誰かに話したくなり、伝播されるものでなければならない」というのが彼のモットーです。

これは明らかに現代のSNS社会にも通用する、バズマーケティングに通じるものです。なんと彼は20年もの間、毎日新しいアイディアを出し続けたといいますから、飛び抜けたセンスの持ち主です。

満を持してオリジナルブランドを発売

ビジネスの転機は、1888年に訪れます。彼が38歳のときに手掛けた紅茶事業への進出です。

イギリス帝国産紅茶が一般にも普及しはじめ、空前の紅茶ブームが到来したのです。当時の紅茶流通システムを調べると、複数の卸業者のディーラーや仲買人のブローカーが絡み合い、それでも利益が大きいことに着目しました。

庶民でも手が届くようになったとはいえ、まだまだ高価だった紅茶。直接仕入れによって最低でも30%の値下げが実現すると確信し、満を持してオリジナルブランドを発売します。

リプトン紅茶は、ただ安いだけではなく、どの店よりも香りも味も良く高品質でした。しかも、紅茶の味が水の味に左右されることに着目し、「あなたの住むエリアの水質にあわせた完璧なブレンド」を商品戦略に打ち出し、大ヒットします。

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