愛知の「激安うなぎ屋」特上鰻丼が2300円の秘密 「うなぎの与助」生の鰻を仕入れて店で串打ち

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「土用の丑の日や大型連休など繁忙期になると、本店はむちゃくちゃ忙しかったです。焼き場での仕事は相当体力を使いますが、基本的に焼いていればよいわけです。客単価も高いので、居酒屋で丸一日、必死になって動き回ってやっと40万円を売り上げるところを短い営業時間で達成してしまう。このうなぎ屋の生産性の高さに驚きました」(松井さん)

飲食業界の働き方を変えたい

しかし、テーマパークは昼がメイン。さらに、都心から離れた場所にあることを考えると、立地のよい本店の売り上げには遠く及ばないと思った。そこで松井さんは本店とは一線を画した激安店としてオープンさせることを会社に提案した。が「高く売れるものをぜわざわざ安く売る必要はない」と却下された。

「うなぎの与助」代表の松井歓さん(筆者撮影)

「そもそもテーマパークで散財した後に家族3、4人で1万円を超える食事はしませんよ。閉園後、県外から来たお客さんたちは店がある商業施設をスルーしてホテルのある名古屋駅や栄に直行でした」(松井さん)

テーマパークの入場者数が増えれば何とかなるという期待は打ち砕かれ、店の経営もテコ入れする必要に迫られた。松井さんは再び激安店のプランを提案し、会社側もそれを認めた。当時ひつまぶしを安く食べられる店はまだ珍しく、徐々に売り上げを伸ばしていった。

この経験がうなぎ屋のヒントになったのだが、もう一つ、松井さんの背中を押す出来事があった。それはある土曜日のこと。その日は半休をとって法事へ行くことになっていた。ところがスタッフに欠員が出てしまい、法事を断念せざるを得なかった。

「そのとき、自分は何のために働いているのだろうと思いました。国家や国民を守る自衛隊や警察、消防の仕事ならまだしも、半休すらとれない飲食業界の働き方を変えたいと考えるようになりました。今の職場から始めるよりも、ゼロから作り上げたほうが早いと思って会社を辞めました」(松井さん)

「うなぎの与助」を始めるにあたって、うざくやう巻きなどの一品料理をなくし、うなぎ丼とひつまぶし、肝焼きのみにメニューを絞り込んだ。そして、気軽に食べられる金額として2000円台前半に決定した。

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