奨学金「深く考えず借りる学生」が減らぬ根本原因 構造的な問題が「現場任せ」「学生任せ」を生む

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千駄木:2017年にJASSOも開始した給付型奨学金ですが、自治体や企業、財団は以前から提供してきましたよね。

松原良輔(以下、松原):私どものサイトで取り扱っている数で言いますと、給付型奨学金は各大学独自のものを含めて8500件ぐらいあります。そして、教育機関以外の民間企業や財団が支給しているものは確実に2000~2500件。この民間企業や財団の奨学金は、私どもがまだ把握しきれていないだけであって、実際のところまだ1000件以上あるのではないかと思います。

千駄木:そんなに数が多いのかと、シンプルに驚きました。

松原:もちろん、給付型奨学金を用意する裏には、それぞれの狙いがあります。例えば民間企業による給付型奨学金は、企業のイメージ向上や採用強化、販売促進などの目的もありますし、最近では生徒募集を目的に用意する、専門学校や留学斡旋学校も増えている印象です。

千駄木:用意する側は当然、それぞれの思惑がありますよね。しかし、貰う側の学生に目を向けると、進学前に奨学金について十分に教えてもらえている学生は決して多くはない印象です。というか、ほぼほぼ個人の自助努力に任せられている。

高校の「奨学金説明会」の実態とは

千駄木:話を貸与型に戻しましょう。水戸さんも指摘されるように、奨学金に関する知識が正しく広まっていないのは、返済当事者たちを取材していても強く感じることです。そして、過去をひもといていくと必ずと言っていいほど、「高校で開催されたはずの奨学金の説明会について、詳しく覚えていない」という現象にたどり着きます。

水戸:その理由としては、奨学金の説明会というのは、JASSOの職員が全国で講演をするわけではなく、基本的に学校の先生がしていることが影響しているでしょう。JASSOは職員の数がそもそも少ないので、全国各地に足を運んで奨学金について説明するのは不可能なんですよね。その代わり、JASSOは高校の先生や大学の教職員向けに「奨学金説明会」の研修を行っていて、高校の先生や大学の教職員はJASSOの委託を受けるような形で、説明会をやっているんですね。

千駄木:だからこそ、説明会の充実度やフォローの手厚さは、先生や職員の熱量に依存してしまうんですね。

水戸:そうなんですよ。しかも、実は高校の先生や大学の職員たちが行っている奨学金説明会の業務は、実質無償で引き受けているんですね。

千駄木:代行について知らない人も少なくないでしょうが、無償ということは、ほとんどの人が知らないことでしょうね。規模の大きな大学だと、学部ごとに関わる職員がいてもおかしくなく、そうなると人件費も決してバカにならない……。

水戸:だから、熱心な先生がいる高校だったら積極的に説明会が開催されますが、公務員気質であったり、裕福な地域の公立高校の先生は説明会を開かずに、希望する生徒に書類だけを渡すということもあるようです。

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