数百万円の着物が売れる「ブランディング」の正体 コロナ禍のリテラシー向上で「見る目」養われる

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広告規制によって幅広くリーチができなくなったために、今度は1人のお客様から得られる利益の向上を目指すようになりました。要するに、リピート顧客の創出です。自社の商品やサービスをリピートして購入、利用いただくには、お客様に「ファン」になってもらう必要があります。そこで欠かせないのが、「ブランド」です。

ただ、お得、安いといっただけでは、すぐに競合他社に取って代わられます。自社のブランドを確立し、支持されるからこそ、お客様は「ファン」になってくれるのです。このように広告環境が変化し、従来のマーケティング手法が通用しなくなったことで、日本企業はなかば強制的に「ブランディング」と向き合わざるを得なくなったのです。

広告規制の強化により、企業はマーケティング戦略を切り替えざるを得なくなり、ブランディングに向き合い始めました。それに加えて、コロナウイルスの流行、厳密にいうと「コロナ禍による消費者の情報リテラシーの向上」もまた、企業がブランディングを真剣に考える契機となりました。

コロナウイルスの流行により在宅時間が増加したことで、人々がインターネットやテレビなどのメディアに接触する機会が増加しました。2021年5月に博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所が公表した「メディア定点調査2021」によると、「メディア総接触時間は、2020年から39.2分伸びて450.9分(1日あたり/週平均)と過去最高」と報告されています。

メディア接触時間の増加は、消費者の情報に対するリテラシーの向上をもたらしたと感じています。たくさんの情報を見た結果、「情報を見る目」が養われたのです。

ステマに騙されない消費者

例えば、おすすめの商品をネットで検索すると、さまざまな比較サイトやランキングサイトが表示されます。なかには、店頭ではあまり目にしないような商品がランキング上位に位置している事例も散見されます。それは、そのランキングが商品情報の掲載で広告収入を得ることが目的であり、信憑性に乏しく、いわゆる「ステルスマーケティング」と呼ばれるマーケティング手法によって作成されているからです。

検索エンジン側では悪質なサイトの検索順位を下げるなどの措置を行っているようですが、そういった規制をかいくぐるサイトは少なくありません。

ですが現代の消費者は、こういったサイトにはだまされません。以前の消費者であれば、「この商品は口コミが良いな」など、ランキング情報を信じて購入する人も少なくなかったでしょう。しかしメディア接触時間の増加によって、私たちはInstagramやTwitterなどのSNSであらゆる角度から情報を収集し、吟味するようになりました。

オンラインでの購入行動も普及し、すぐに情報に飛びつくのではなく、時間をかけて判断し、必要であれば二次情報にあたるなど、情報の精査に時間をかける消費者が増加したと思われます。情報に対するリテラシーが底上げされたことで消費者が賢くなり、広告の意図が見抜かれるようになったのです。小手先のマーケティング手法で商品が売れる状況ではなくなりつつあります。

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