「英語は決まり文句が8割」を意識すると上達する データ分析で英語の決まり文句の重要性が浮上

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それは、英語の母語話者は、文法ルールを基に単語を1つ1つ並べて新規の文を生み出すのではなく、How old are you?(何歳ですか?)、The point is that ...(要するに~だ)、It’s such a shame that ...(~とはとても残念です)、Just because X does not mean Y. (XだからといってYとは限らない)などの定型表現をつなげたり、一部を入れ替えたりして、文を構築することが多いからです。

伝統的には、言語の根幹をなすのは文法と単語であり、定型表現は言語使用のごく一部を占めるにすぎないと考えられてきました。英語教育論争においても、「文法は教えた方が良いのか」「単語はどう教えるべきか」などが話題になることはありますが、「定型表現はどう教えるべきか」が論じられることはほとんどありません。

以前、中学校の英語教科書で、

といったファストフード店の会話が掲載され、物議をかもしたことがあります。Large or small? Large, please. For here or to go?は、いずれも一般的な定型表現ですが、主語や動詞がない不完全な文です。そのため、「中学校の教科書に主語や動詞がない文を掲載するとは何事か」といった批判が巻き起こりました。

文法こそが言語の根幹であり、定型表現は取るに足らないものであるという考えを端的に表していると言えるでしょう(もちろん、定型表現の中にも有益なものとそうでないものがあります。ファストフードの注文に必要な定型表現を中学生に教えることが適切であるかどうかは意見が分かれるところでしょう)。

ほとんど研究されてこなかった……

定型表現は、実践(=英語教育)においてだけでなく、理論(=言語学)においても軽視されてきました。言語には規則的な部分と規則から逸脱した部分がありますが、言語学者の多くは、規則的な部分に関心を持ってきました。例えば、文法や音声にまつわる事象を分析し、そこから一定の体系(ルール)を導き出すことに多くの労力がそそがれてきました。

定型表現の中には規則から逸脱したものが多くあります。例えば、by and largeは「全体的に」という意味ですが、前置詞byと形容詞largeという異なる品詞の2つの単語が接続詞andによって結びつけられているため、一般的な英文法のルールからは逸脱しています。

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