ゴルフはなぜここまで凋落してしまったのか 半減した市場、「6000億円」増提言の現実味

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指導プロの収入は年190万円

提言書では、2013年のティーチング市場は約150億円と推定している。現在のティーチングプロ数は日本プロゴルフ協会、日本女子プロゴルフ協会、それらの会員ではない個人らを含めて約8000人。1人あたりで割ると...なんと190万円に満たない。アルバイトの学生でもこのぐらいは稼ぐ人はいるだろう。ティーチングプロの中でも人気があって高収入を得ているプロがいることを考えると、ティーチングだけでは生活できないプロが数多くいることになる。「夢のない世界」でもあるのだ。

ツアープロについては「貧富の差は歴然!プロゴルファーの年収事情」(2014年12月配信記事)で述べたので省くが、ゴルフトーナメント市場も縮小傾向にある。もちろん、宮里藍や横峯さくら、石川遼や松山英樹といったようなトップツアープロになれば収入は別格だが。

関連メディアも含めてゴルフ業界の危機感は相当なものだが、今回の提言書で改めて数字を見ると「もうだめなのか」とため息が出そうだ。それでも、廣瀬座長は「ゴルフ市場はまだ大きなマーケット。市場規模は1兆4000億円、30万人の雇用を抱え、経済波及効果は4兆円ある。業界の事業計画をちゃんとつくる必要がある」という。まだまだ捨てたものではない、という見解だ。

その根拠はゴルフをやっていない人に対する1万人アンケートにあるという。余暇に年間10万円支出可能な人の中で「ゴルフに興味がある」と答えた割合をゴルフプレー可能な人数から導き出したのが「2000万人の潜在需要層」の存在なのだという。

ゴルフ人口は日本の7%にすぎない

「生涯スポーツ」という旗を掲げていても、現在、ゴルフをする人口の割合は日本全体のたった7%しかいない。残り93%の中に「大きな市場がある」という見方だ。これをお読みの方は、7%に入っている方か、93%の方にいる方かはわからないが、今後次第ではどっちに入るか、ゴルフ界の魅力によって決まっていくだろう。

10年後の2024年に市場規模を2兆円にする、というのは可能なのだろうか。詳細についてはおいおい、機会があれば紹介していくつもりだが、ロードマップによると、2016年までに既存のやり方を見直し、2018年までに「潜在需要層」がゴルフに入ってきてもらえるようにして、その後は新規事業を立ち上げて加速的にゴルファーを増やしていく、という道筋を描いている。

その年々の数値目標も掲げている。具体策は現場ごとに出していこうというのだが、果たして? たぶん、どんな業界でもそうだが、それぞれの利害関係がある以上、1つにまとまるのは無理があるに違いない。「客を奪い合っている場合ではない」と提言書を発表した3者がつくる「未来への船」にどれだけ乗り込んでくるかは未知数だが、確かに3者が手を携えるのはこれまでになかったことではある。

赤坂 厚 スポーツライター

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あかさか あつし / Atsushi Akasaka

1982年日刊スポーツ新聞社に入社し、同年からゴルフを担当。AON全盛期、岡本綾子のアメリカ女子ツアーなどを取材。カルガリー冬季五輪、プロ野球巨人、バルセロナ五輪、大相撲などを担当後、社会部でオウム事件などを取材。文化社会部、スポーツ部、東北支社でデスク、2012年に同新聞社を退社。著書に『ゴルフが消える日 至高のスポーツは「贅沢」「接待」から脱却できるか』(中央公論新社)。

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