年収400万円のあの人も残業代ゼロになる日 「1000万円プレーヤーだけ」と思ったら大間違い

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(写真:ealc / Imasia)

安倍政権が2015年の通常国会で成立をもくろんでいる、通称「残業代ゼロ法案」が物議を醸している。

企業には労働基準法で定められた一日8時間、週40時間の法定労働時間を超える残業(時間外労働)をした労働者に、原則として一定の割増賃金(残業代)を支払う義務がある。

高年収ホワイトカラーを残業規制の対象外に

これに対して、現在、有識者会議などで検討されている残業代ゼロ法案は、現行労基法で残業規制の対象となっている労働者のうち、「年収1075万円以上を稼ぐホワイトカラー系の労働者」に限って残業規制を一部見直す、つまり残業代を払わないように改正するというのが柱だ。

別名で「日本版ホワイトカラー・エグゼンプション」とも呼ばれている。ホワイトカラー・エグゼンプションとは米国生まれの制度で、その名のとおり、ホワイトカラー労働者を残業規制の対象から外す(エグゼンプション)ことを意味する。

2月13日に公表された労働政策審議会の分科会報告から、問題の部分を引用しよう。やや専門的で難解な表現となるが、原文をそのまま掲載する。

「時間ではなく成果で評価される働き方を希望する労働者のニーズに応え、その意欲や能力を十分に発揮できるようにするため、一定の年収要件を満たし、職務の範囲が明確で高度な職業能力を有する労働者を対象として、長時間労働を防止するための措置を講じつつ、時間外・休日労働協定の締結や時間外・休日・深夜の割増賃金の支払義務等の適用を除外した労働時間制度の新たな選択肢として、特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)を設けることが適当である」(平成27年2月13日労働政策審議会「今後の労働時間法制等の在り方について(建議)」)

要は「時間ではなく成果で労働を評価するためには、残業代をゼロにしなければならない」というのが根本にある理屈である。

「年収1000万円プレーヤーの話だから自分には関係ない」と思うビジネスパーソンが大半かもしれない。確かに現時点ではそうかもしれない。たとえば東洋経済オンラインが独自推計した「最新版!『40歳年収が高い』トップ300社」(2014年10月15日配信)で見ると、40歳で年収1075万円以上をもらっていると推計される上場企業社員は27社しかない。集計対象である全上場企業約3600社の1%未満だ。今回の残業代ゼロ法案で対象になりそうな労働者は多めに見積もっても全体のせいぜい1割に満たないと考えていいだろう。

だが、ここに落とし穴が隠れている。

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