「ハラスメント包囲網」が職場に生み出す残念な溝 女性への無意識の思い込みが問題をこじらせる

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そもそも女性管理職が1割にも満たない「男尊社会」の日本では、「オールド・ボーイズ・クラブ」が強固に形成されています。「オールド・ボーイズ・クラブ」とは社内派閥や飲み会、ゴルフ、業界の勉強会などを通じて男性同士の間に築かれる暗黙のネットワークのこと。

男性はここで情報交換をしたり、仕事上の便宜を図ったり図ってもらったりしているのが現実です。会議室で行われる議論や意思決定はその結果であり、形式的なものであることも珍しくありません。

ますます強固になる男性管理職たちの結束

仕事をする女性たちがこの「オールド・ボーイズ・クラブ」に入り込むためには、男性に警戒されないように男性に擬態して同化するか、クラブのマスコットになるかしかありません。組織の中の明文化されていないルールやしきたりが女性に伝わりにくいのは、そうした背景があってのことです。

加えて昨今のハラスメント包囲網の強化。セクハラで告発されることを恐れる男性管理職たちが女性たちと距離をとることもありえます。そうなれば、「オールド・ボーイズ・クラブ」の結束はますます固くなり、女性に重要な情報は入ってきません。結果、女性活躍推進はさらに遠いものとなってしまうでしょう。

してはいけないのはハラスメントであって「2人きりで話すこと」でも「食事に誘うこと」でもありません。

ただ、男性管理職にしてみれば「セクハラだ」と疑われるようなリスクは避けたいところでしょう。

パワハラ問題は、個人の感じ方や考え方に委ねる部分が大きいのが特徴です。

厚生労働省の調査からも「行為者にパワハラをしている自覚がない(53.8%)」「受け手がパワハラであると過剰に捉えてしまう(37.2%)」「世代間ギャップがあり従業員によって認識が異なる(36.4%)」(厚生労働省「パンフレット 職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!」)と、多くの人がどういったものがハラスメントにあたるのか戸惑っている様子が伝わってきます。

次ページ「ハラスメント」の基準を個人の感覚任せにしない
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