「ハラスメント包囲網」が職場に生み出す残念な溝 女性への無意識の思い込みが問題をこじらせる

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女性だって技術開発が得意な人もいるし、育児中でも仕事にフルコミットしたい人もいます。「弱く傷つきやすい」という想像で、チャレンジさせないというのは、成長するチャンスを奪うことと同義です。

そういった「善意のつもりバイアス」が、「女性は後のびしない」「管理職候補が少ない」と言われる状況をつくってしまうのです。

実際、プレ管理職世代の女性からは・・・

「入社したばかりの頃は女性のほうが優秀だったように思うけど、男性のほうが重要な仕事を任されることが多くて、いつの間にか実力に差がついているんです。今になって会社は女性に昇進させようとしているし、必要なことなんだろうけど、女性だからって実力がないのに出世するのはおかしい。正直言って管理職になる自信がありません」

といった声も多く聞こえてきます。

この「善意のつもりバイアス」の延長で、誤った「セクハラに対する気遣い」が行われると、さらに男女の差が開いていきます。

近ごろ、ハラスメントだという指摘を恐れるあまり「男女2人きりでの食事は禁止」という企業が増えているそうです。食事だけでなく「相談ごとや打ち合わせも2人にはならないよう、第三者を同席させること」とする職場さえあるとか。

公のルールにせずとも「自分がセクハラの加害者のように言われて損をしそうだから」「自覚なくうっかりセクハラをしたら申し訳ないから」と、女性の部下と2人で食事には行かないことを自分に課している男性管理職の話もよく聞きます。

でも、第三者がいる中で話せることには当然限界があります。男性部下は上司と腹を割って話す機会があり、女性にはその機会が少なくなる。そうした結果を生み出すのだとしたら、「気遣い」に見えて実は不公平なことといっても過言ではありません。

もし、このルールを適応するのであれば、男性同士2人きりでの食事も禁止する、相談ごとや打ち合わせは男女問わず3人以上で、と決めるのがフェアではないでしょうか。

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