千夜、一夜が描く失踪した夫を待つ妻の複雑な心 地方で生きる中年独身男性の姿も描いている

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失踪者を待つ側を描いた映画、『千夜、一夜』(写真提供:(C)2022映画『千夜、一夜』製作委員会)
新潟県・佐渡島を舞台に突然姿を消した夫の帰りを待ち続ける女性を描いた『千夜、一夜』が10月7日からテアトル新宿ほか全国の劇場で公開中だ。作品制作のきっかけとなったのは、全国に約8万人いるとされる全国の警察に届けられる行方不明者の数。失踪者リストから着想を得て生まれた物語は、彼らを待ち続ける家族の思いと現代人の抱える孤独を描くものだった。映画制作の経緯や現代の家族像などについて本作監督の久保田直さんに話を聞いた。

 

【映画のあらすじ】登美⼦(田中裕子)の夫・諭が突然姿を消してから30年の時が経った。失踪の理由も、生きているのかどうかもわからないまま、論の帰りを待つ登美子に、漁師の春男(ダンカン)は想いを寄せ続ける。そんなある日、登美⼦のもとに、2年前に失踪した夫の洋司(安藤政信)を探す奈美(尾野真千子)が現れる。しばらくして、奈美は新しい恋人ができたため、洋司と離婚したいという。その直後、登美⼦は街中で偶然、失踪した洋司を⾒かけるが…・・・。

――特定失踪者(北朝鮮による拉致の可能性を排除できない失踪者)に着想を得て映画の制作を開始したとのことでした。

20年程前に300人ぐらいの顔が掲載された「特定失踪者一覧」が、強烈なビジュアルとして印象に残っていました。

後日、その一覧の中の何人かの方が「自分は失踪はしていない」と自分の家族に電話をしていたという話を聞いて驚きました。と同時に、喧嘩をして家を飛び出していった、などの事情がない限りは「失踪した人たちは前の日まで普通に過ごしていたに違いない」とも思ったんです。

いったいどんな理由で消えてしまいたかったのだろうか、と。突然消えてしまった人の残された家族はどんな思いで待つんだろうか……と。

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