日本マイクロソフト"超スムーズ人事"の裏側 外資ITらしからぬ、きれいなバトンタッチ
では、なぜこの時期に樋口社長は、会長に退くことを決断したのか。
それは、樋口社長が会見で語った次の言葉に集約されているといえよう。「昨年2月、米マイクロソフトのCEOにサティア・ナデラが就任して以降、マイクロソフトの変革はさらに急ピッチで進められている。日本マイクロソフトもリーダーをリフレッシュし、世代交代をすすめ、さらに変革を進めていくタイミングにあると感じた」。
ナデラCEOの就任以降、マイクロソフトは、収益の柱としてきたWindowsを無償提供すると発表。さらに、iPadやAndroidでもOfficeが活用できるような取り組みを開始し、クラウド領域においては、競合企業との連携を相次いで発表してみせた。
「Window、Windows、Windows」と、その重要性を繰り返し唱えるのが口癖でもあった前任のスティーブ・バルマーCEO時代には考えられなかったような施策を、「モバイルファースト、クラウドファースト」のメッセージのもとに、大胆に打ち出しているのがナデラCEOになってからの大きな変化だ。それは9割以上のシェアを持つPC市場における王者の戦略から、スマホ、タブレットを加えたデバイス市場においてはわずか14%のシェアしかないというチャレンジャーへの戦略への転換でもあった。
サティア・ナデラCEOより若い社長に
一方で、日本マイクロソフトの歴代社長としては、51歳という最年長で社長に就任したのが樋口社長。そして、社長就任7年という在任期間は、外資系IT企業の社長としても長い。今年58歳になる樋口社長が、そろそろ退任時期を模索していたのも当然のことだろう。実際、昨年2月には、スティーブ・バルマー氏が、58歳でCEOを退いている。樋口社長は、今年、その年齢に達したというわけだ。
今年47歳となった米本社のナデラCEOにあわせて、日本法人も45歳の平野社長へとバトンタッチすることで、若返りの足並みを揃えるといったこともあったはずだ。
「社名を日本マイクロソフトに変えてから、来会計年度がちょうど5年目。また、日本マイクロソフトが創業してから30年目を迎える。そうした記念すべき年に新たなリーダーにバトンタッチできるのはいい形」(樋口社長)という節目も、交代の意思を固くさせたのかもしれない。
ところで、当の樋口社長だが、この7年間の日本マイクロソフトの実績をもとに、米本社へと渡り、米マイクロソフトの経営などに関わっていくという選択肢もあったはずだが、どうもそうした想いはまったくないようだ。
むしろ、会長として日本マイクロソフトの平野新体制を支援する姿勢を明確に示す。
「会長としての仕事は、私が持つ外部のネットワークを生かした活動、さらにはトップ営業や、財界および政府への影響力向上に取り組む」と樋口社長は語る。
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