地球で最も高血圧なのは「キリン」という驚愕事実 上がおよそ250、下が200と異常なほど高いワケ

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さて、そんなふうにうまくやり込められてしまったゲッツだが、しばらくあとに、とある情報をつかむ。南アフリカにおいて、多数のキリンを駆除する予定があるというのだ。

当時、南アフリカの農業は急速に発展し、キリンは農作物にとっての脅威とみなされていた。いまでは考えられないことだが、農業を守るために多数のキリンが殺害されてしまったのだ。

ゲッツはこのプロジェクトを担当しているチームに連絡し、駆除のため捕獲されたキリンを使って血圧測定に踏み切ることとした。そして、血液の成分分析や心臓・血管の解剖学的な特徴を調べるとともに、頸部の動脈にカテーテルを挿入して血圧を実測することに成功したのだ。世界ではじめて計測されたキリンの血圧は、およそ200mmHgだった。

全身に血液を送る左心室の筋肉が著しく発達

それでは、非常に高血圧なキリンの心臓には、いったいどんなユニークな特徴があるのだろうか?

まず最も特徴的なのが、左心室の筋肉が著しく発達している点である。哺乳類の仲間では、基本的に、全身に血液を送る左心室の筋肉は、肺だけに血液を送る右心室に比べて発達する傾向がある。

キリンの場合はその傾向が顕著で、左心室の筋肉は厚さ8センチにも達し、右心室の筋肉の3倍以上の分厚さになっている。分厚い筋肉が力強く収縮することにより強い血流が生まれ、遠く離れた脳にまで血液を送ることができるようになっているわけだ。

ただし、発達した筋肉は良いことばかりではない。血液がたまる空間の“壁”である筋肉が分厚くなるということは、壁の内側にある空間が小さくなることにつながってしまう。

外見のサイズが同じでも、薄い段ボールの箱よりも、分厚い発泡スチロールケースのほうが内側の容積が小さいのと一緒だ。そのため、キリンの左心室は強い収縮力を示す一方で、内部の容積は小さく、1回の拍動で送り出せる血液の量はとても少ない。

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