地球で最も高血圧なのは「キリン」という驚愕事実 上がおよそ250、下が200と異常なほど高いワケ

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血圧というのは、1分間に心臓から送り出される血液の量と、血管の抵抗値(血液の流れにくさ)によって決定する。心臓から送り出される血液の量が多ければ多いほど、また血管の中を血液が流れにくいほど、血圧が高くなるのである。

ヒトの例を出してみると、動脈硬化によって血液が流れにくくなると、結果として高血圧が引き起こされる。

キリンも一度に送り出せる血液量は多くない

では、キリンではどうだろうか。

『キリンのひづめ、ヒトの指 比べてわかる生き物の進化』(NHK出版)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

心臓内の空間が小さいので、一度に送り出せる血液の量はたいして多くない。心拍数が際立って高いわけでもないので、「1分間に送り出せる血液の量が多い」というわけではなさそうだ。

そこで、高血圧を生み出す器官として近年注目されているのが、血管だ。キリンの血管は、ほかの哺乳類に比べて抵抗値が著しく高く、血液が流れにくくなっている。とくに手先・足先の血管でその傾向は顕著だ。

キリンの血管に関する研究はまだまだ始まったばかりで、高血圧の謎がすべて解き明かされたわけではない。疑問はつきないどころか、「1個新しいことがわかったら、10個わからないことが増える」くらいの状況だ。

今後さらなる調査が進むことで、高血圧の秘密がしだいに解き明かされていくだろう。いまからとても楽しみだ。

郡司 芽久 解剖学者、東洋大学生命科学部生命科学科助教

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ぐんじ めぐ

1989年生まれ。2017年3月、東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程を修了し、博士(農学)を取得。同年4月より日本学術振興会特別研究員PDとして国立科学博物館に勤務後、筑波大学システム情報系研究員を経て2021年4月より現職。専門は解剖学・形態学。第7回日本学術振興会育志賞を受賞。著書に『キリン解剖記』(ナツメ社)。

 

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