地球で最も高血圧なのは「キリン」という驚愕事実 上がおよそ250、下が200と異常なほど高いワケ

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血圧の上下はヒトの健康診断でもおなじみだが、一応説明しておくと、上は「心臓が収縮して血液が送り出されたときの血圧」で、下は「縮んだ心臓がもとに戻るとき(血液を送り出していないとき)の血圧」のことだ。

成人したヒトの正常な血圧が上120Hg未満、下80mmHg未満であることを考えると、キリンは異常なほどの高血圧といえよう。

とはいえ、キリンにとってはこの高い血圧が正常値である。もしヒトの正常値と同じくらいの血圧になってしまったら、たちまち脳に血液が足りなくなり、立ちくらみを起こして倒れてしまうだろう。

冒頭で述べたように、キリンは地球上で最も高血圧な動物である。

「心臓から脳までは遠く離れているのだから、血圧が高いにちがいない」

そんなことを考えた研究者は、キリンという生物が発見された当初から存在していただろうが、世界ではじめてキリンの血圧が実測されたのは1955年のことだ。

計測を行ったのは、外科医ロベルト・H・ゲッツ博士。世界ではじめてヒトの冠状動脈バイパス移植手術を行ったことでも知られる人物である。

ケンブリッジ大学の教授に相談したが…

彼の書き残した論文の中には、キリンの血圧測定にいたる経緯が記されている。「キリンの血圧に関する研究は、ヒトの高血圧症を理解するうえでも役立つはずだ」と考えたゲッツ博士は、まずケンブリッジ大学を訪問し、動物生理学研究室の教授に「キリンの血圧を測定したい」と相談したそうだ。すると、「研究室を使うのはかまわないけど、測定に使うキリンは持参してね」と返されたらしい。

こんなやりとりを論文に書き残しているということは、ゲッツはこの返事にけっこう腹を立てていたのかもしれない。

論文には、「実験に最低3頭のキリンが必要だとすると、輸送費も考えたらとんでもない金額がかかる。あきらめざるをえなかった」という言葉も記されている。ゲッツには悪いが、一休さんのようなやりとりで、私はけっこう好きだ。はじめて論文を読んだときはニヤニヤしてしまった。

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