近代税制の礎「地租改正」農民が泣いたエグい中身 土地の私的所有権が確立したのに手放す者が続出

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最も多いのが、華族や士族に与えられた家禄や、維新功労者に対して付与された賞典などで、実に38%を占めている。次に多いのが、陸海軍費だ。20%を占めて一般行政費を上回っている。

臨時的な「例外歳出」を見ても、やはり軍事費が重くのしかかっている。戊辰戦争・佐賀の乱・台湾外征の戦費が11%を占めるほか、22%を占める鉄道・電信・灯台も軍事施設での使用が主である。軍事力の増強のために、多くの税金が投入されていた。

地租改正は、そんな不安定な国費を安定させることが、第一の目的だったはず。だが、財政状況を踏まえると、安定させるだけではなく、増やさなければならなかった。そのため、こんな目標が掲げられたのである。

「まず旧来の歳入を減らさないことを目的とし、税金を割り当てる」

明治政府は倒幕を果たす際に「税金の負担を軽くする」とアピールしてきたが、これでは、逆に重くなってしまっている。「上下均一、貧富公平を旨とす」、つまり「税金が重すぎる者は減らし、税金が軽すぎる者は増やして公平化を図る」として、体裁を取り繕ったが、実際はどの層にも重い課税がなされることになった。

地租改正に反対する一揆が各地で勃発

こんな過酷な地租改正を断行するべく、大久保は地租改正事務局総裁となり、御用係に大隈重信、三等出仕に松方正義を任命し、強力な陣を敷く。台湾出兵による戦費も重くのしかかっている。急がねばならなかった。

官員を各府県に派遣して、地方の改正事業を監督。前述したように、税収を確保するために地価を都合のいいように定めて、それを各地の農民に課したのである。

当然、苦しくなるばかりの生活に黙ってはいられない。地租改正に反対する一揆が各地で勃発する。中でも大規模だったのが、茨城県真壁での真壁騒動や、三重・愛知・岐阜・堺での伊勢暴動だ。伊勢暴動では、実に5万人もの処罰者が出ている。

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