非モテが「男女平等なんて夢」と暴れ回る切実事情 世界中で問題になっているインセルとは何か

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ミナシアンは犯行直前のフェイスブックへの投稿で、エリオット・ロジャーを称賛・崇拝し、インターネットの女性蔑視グループにこう言及している──「インセルの謀反はすでに始まっている! すべてのチャド【モテる男性のこと】とステイシー【モテる女性のこと】を倒してやる! 最高の紳士エリオット・ロジャー万歳!」「インセルの反逆はもう始まった。チャドとステイシーの支配を打倒せよ! 偉大なるエリオット・ロジャー万歳!」。

インセルたちのジャーゴン(仲間うちだけで通じる特殊用語)の一つに、ブラックピル(黒い錠剤)を飲む、というものがある。自分がインセルであると覚醒する、という意味である。由来は、アンチ・フェミニズム的な人々が用いた「レッドピルを飲む」という言葉にある。

これは映画『マトリックス』で、主人公のネオ(キアヌ・リーヴス)が青いピルと赤いピルのどちらを飲むか、と反乱軍のリーダー、モーフィアス(ローレンス・フィッシュバーン)から選択を迫られるシーンに関係する。青いピルを飲むなら、ネオはもとの冴えない日常に戻らねばならない。一方で赤いピルを飲むと、この世界は機械と人工知能によって支配された仮想的な世界にすぎなかった、という「真実」に覚醒する。

映画の中の暴かれた「真実」の世界においては、人々は機械につながれ、家畜や栽培植物のように電気エネルギーをしぼり取られ、偽物の現実の夢を強制的に見させられている。

つまりインセルたちは、男女平等なんて夢=理想はフェイク(偽物)であり、男性たちが強いられた非モテという過酷な現実こそが「真実」である、男たちはブラックピルを飲んでその「真実」に目覚めねばならない、と呼びかけたのである。

「ダークヒーロー」としてのインセル

こうした国際的な動向の背景には、何があるのか。有名なアクティヴィスト、フランコ・ベラルディは、『大量殺人の〝ダークヒーロー〟──なぜ若者は、銃乱射や自爆テロに走るのか?』(杉村昌昭訳、作品社、2017年、原著2015年)の中で、パリの同時多発テロ、コロンバイン高校の銃乱射事件、ヴァージニア工科大学のチョ・スンヒによる銃乱射事件など、世界中の銃乱射事件や大量殺傷事件について分析した。

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