「ベニクラゲ」が死なないのは若返り続けるから 不老不死のクラゲの研究は人間に適用できるか

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水槽での飼育に対しベニクラゲは「とても神経質だ」と、スペインのオビエド大学でこのクラゲを研究する科学者、マリア・パスクアル・トルネル氏は言う。「また、とても小さいので、フィールドでの識別やサンプリングも難しい」。

研究用に十分なサンプルを得るため、パスクアル・トルネル氏らのチームは特別装備のキャンピングカーでイタリアの海岸に乗り付け、そこでダイビングをして野生のベニクラゲを集め、急いで研究室に持ち帰った。

ゲノムを解読した研究チームは、特定の遺伝子が余分にコピーされていることに目を留めた。ベニクラゲの生まれ変わりに、これらの遺伝子が重要な働きをしている可能性があることを示すものだったからだ。余分にコピーされた遺伝子には、DNAを保護・修復する遺伝子も含まれていた。動物のDNAは加齢とともに劣化するのが普通だ。

若返りのプロセスを引き起こすため、研究チームはベニクラゲを飢えさせるなどしてストレスを与えた。そして、メデューサ(成体)が小さな塊となり、発芽したポリプへと変身、再び若いクラゲへと生まれ変わる各段階で、どのような遺伝子が使われているかのスナップショットを記録した。それぞれの段階で一部のクラゲを凍らせ、それをペースト状にしてmRNA(メッセンジャーRNA)を抽出することで、どの遺伝子が活発にタンパク質を作っているかを記録したわけだ。

遺伝子全体の働きがカギ

すると、クラゲが変化するにつれ、DNAの保存と関わりのある遺伝子の働きが著しく変化していることがわかった。成体では、これらの遺伝子は高いレベルで活性化または発現し、タンパク質の生成に頻繁に使用されていた。ところが、ポリプへの退化が始まると、同遺伝子の動きは静かになり、タンパク質の生成レベルは、クラゲが塊状となっている段階で最も低くなった。

一方、多能性、すなわち細胞がさまざまな形態に成長する能力に関連する遺伝子は、正反対の変化を示した。これら多能性遺伝子の活動は成体では静かだったが、クラゲが体を分解して再構築を始めると一気に動き出し、一連のプロセスが完了すると休眠状態に戻っていった。

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