もう一つ、考えなければならない要因があります。価格が下がっているのは原油だけではありません。銅や石炭、鉄鉱石など、資源全般の価格が下落しています。
この主な理由は、先にも述べたように新興国の成長率が鈍化していることです。大量の資源を消費していた新興国の景気が弱まると、その分、資源の需要が減少しますから、価格が下がりやすくなるのです。
つまり原油価格は、イスラム国や中東情勢、そして中国を中心とした新興国の景気に大きく左右されるというわけです。
今後の動きは非常に予想が難しいのですが、先ほども述べたように、原油価格は現状が底値圏から少し戻したところで、当面、現状の水準がある程度続きながらこの先は大きく落ちることはないのではないかと思います。その点では、商社は今期、厳しい業績となりましたが、次の期では大きな減損処理などがなくなり、収益はある程度回復してくるのではないでしょうか。
大胆な方向転換で生き残った商社
バブルが起こる前、1980年代前半は「商社冬の時代」と言われていました。
この時代は、日本企業、特に自動車業界の海外進出が急スピードで進んでいました。それまでは、国内で事業を行っていた企業が、商社に頼んで、自社の製品を海外に売ってもらっていたのですが、国際化が進んだことで、商社は仲介業務で儲からなくなってきたのです。売上げは大きいけれども利益は少ない、これが「冬の時代」の商社でした。
しかし、こうした状況に対して、商社はいち早く危機感を覚え方向転換を始めました。80年代後半から、物品の仲介業務の比重を下げ、投資会社へと変貌したのです。
莫大な資金力と情報力、ビジネスのノウハウを生かして、さまざまな分野に投資をはじめました。今回話題になった、石炭、銅、シェールオイルなどの資源事業だけでなく、食料品、ブランドビジネス、コンビニエンスストアまで、あらゆる事業に投資しています。皆さんもご存じのように、三菱商事の傘下にはローソンがあり、伊藤忠商事の傘下にはファミリーマートがありますよね。
このような事業転換の結果、投資リスクや在庫保有リスクは増大することになりましたが、それ以上の収益を上げ、商社は高収益企業へと姿を変えたのです。また、「事業ポートフォリオ」と言って、多くの種類の事業を持つことにより、収益の安定性と成長性のバランスをとっているのです。
今期は、資源価格の急落によって損失を抱えてしまいましたが、先に見たように、安全性には全く問題ありませんので、そう心配することはありません。ただ、全体の収益に占める資源事業の割合は小さくありませんから、資源価格の動向には引き続き注意が必要でしょう。
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