2社ともに、原油や資源安によって巨額損失を被ったわけですが、会社の安全性に影響はないのでしょうか?
まずは、中長期的な安全性を示す自己資本比率(純資産÷資産)を見てみましょう。丸紅の貸借対照表(9ページ参照)を見ると21.5%。住友商事(5ページ参照)は29.5%。比較的高い水準です。
続いて、短期的な安全性を調べるための流動比率(流動資産÷流動負債)を計算しますと、丸紅は117.5%、住友商事は155.9%。商社の場合、120%前後あれば十分ですから、2社ともに安全水域に入っていると言えます。
今期に減損損失が出たとしても、その後も大きな損失が続くということでなければ、短期的・中長期的な安全性には全く問題ありません。そもそも、商社は市況商品を扱っていますから、こういった価格変動の可能性があることはある程度織り込んだ経営をしているはずです。
確かに今回は、原油がここまで急速に下落するとは思っていなかったでしょうが、他の事業でバランスが取れるようにポートフォリオを組んでいますから、当面、安全性が揺らぐことはありません。
これから原油価格はどうなる?
では、2社の先行きを考えてみましょう。そのためには、巨額損失の原因である原油価格の動向を見極める必要があります。
なぜ、今、原油価格が下がり続けているのでしょうか。直接的な原因は、世界最大の産油国の一つであるサウジアラビアが、原油の減産に応じないことです。
ではなぜ、サウジが減産に応じないのか。その理由は主に三つあると言われています。一つは、米国で産出される安価なシェールオイルに対抗するためです。
シェールオイルは、年々シェアを拡大し続けてきました。ただ、シェールオイルは発掘コストが高いため、原油価格が下がれば、新規開発が抑え込まれるとサウジは考えているのです。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら