耳石も骨と同じ炭酸カルシウムが主成分だ。加齢によってカルシウムの代謝障害が生じると、耳石も剥がれやすくなると考えられている。実際、良性発作性頭位めまい症は、骨粗鬆症の患者や、骨密度が急激に低下し始める閉経後の50歳以降の女性に多くみられる。
良性発作性頭位めまい症は、周囲がぐるぐる回っているように感じる回転性のめまいの代表的な疾患だが、同じ回転性めまいが起こるものにはメニエール病もある。メニエール病も聴覚や平衡感覚をつかさどる内耳の異常が原因だが、こちらは過労や睡眠不足、ストレスなどによって、内耳がむくむことから引き起こされる。
どちらのめまいも吐き気などを伴うこともあり、発作を繰り返す点は似ているが、良性発作性頭位めまい症のめまい発作は長く続くことはなく、数秒から2〜3分程度で治まる。
「動かずにじっとしているときにはめまいが起こらないのも、良性発作性頭位めまい症の特徴です。朝起きたときや寝返りを打ったとき、上を向いたときなど、頭を動かしたときに、ぐらぐらっと回転性のめまいが起こることが多いです」(菅原医師)
それに対し、メニエール病では、難聴や耳鳴りなどの症状を伴い、10分~数時間という長い時間めまい発作が続く。患者数は良性発作性頭位めまい症ほど多くはないが、症状としてはより激しい。
めまいの診断とその後の経過
医療機関で良性発作性頭位めまい症かどうかを診断する際は、問診などのほかに、眼球の動きなどを調べる検査を行う。実際に頭を動かしたときに眼球が 振れる「眼振」が起これば、良性発作性頭位めまい症と診断される。めまいが起きる向きを確認し、そのときの眼球の動きによって、どの半規管に耳石が入っているかもわかる。
「耳石が入った三半規管が判明すれば、めまいの専門医なら、患者の頭や体を動かすことで耳石を耳石器に戻す『浮遊耳石置換法』を行う場合もあります。耳石が三半規管から出ればめまいは起きないため、この治療だけでよくなってしまうこともあります」(菅原医師)
良性発作性頭位めまい症は自然治癒が期待できる、比較的治りやすい疾患だ。耳石が残っていても、約2週間で自然に体に吸収され、それとともにめまいも治まっていくことが多い。そのため、症状を和らげるための薬や吐き気止めなどが処方され、様子をみる場合もある。
「良性発作性頭位めまい症の場合、めまいや吐き気などの症状はおおむね1〜2週間で軽快します。ただ、後遺症として慢性的なめまい症状が続いてしまう人もいます。いずれにしても、なかなか治らない場合はまれに脳の病気などが隠れているおそれもあるため、速やかに耳鼻咽喉科を受診しましょう」
めまい発作というのは、ある日突然起きてしまうものだ。実際にもし、急なめまいに襲われたときは、どのように対処するのがよいのだろうか。
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