ネガティブな感情に支配されないためにどうすればいいか。
一様にこうすればいいという正解はありませんが、できることはたくさんあります。たとえば、私が研究している「再評価」という心理的アプローチを紹介します。
これは簡単にいうと、ネガティブな感情が生じたときに、その状況や感情自体を客観的に整理して、「今、私はこの気持ちを感じる必要があるかな」や「ここから私は気持ちを変えられるかな」と立ち止まって考えてみる、という手法です。「ネガティブな感情をポジティブな方向に持っていく」というのがコンセプトです。
もちろん、ネガティブな感情をポジティブに変えるというのは言うが易しです。また、表面的にネガティブな感情を忘れようとしたり、許容したりしようとするなど、無理やり抑制するのでは、長期的に見ると、ポジティブな気持ちは得られません。
意識的に考えに向き合う
しかし、自分の考えや状況に向き合って、吟味することは誰にとっても大切で、意識的にこれを繰り返すことで気持ちが明るい方向に変わることもあるのです。
「再評価」は科学的な根拠もあります。私は研究により、ネガティブからポジティブな感情に変わる際に、どのように脳機能が働いているのかを明らかにしました。再評価は、「感情を生む」扁桃体と「論理的な思考を司る」前頭前野という脳部位の機能のコラボレーションで起こることがわかっています。
そして、私自身も日常の中で、再評価を利用しています。
たとえば先日、子どもたちが発泡スチロールを使って工作をしていて、小さくばらばらになった発泡スチロールが部屋中に広がっていたことがありました。
私は「ちゃんと片づけなさい」と言ったのですが、子どもたちは遊びに夢中になって、全然片づけません。何度言っても片づけないので、私もイライラしてきて、「私の言うことを聞かないのは、息子たちが私への敬意を持っていないからだ」というふうに考え出してしまった。
そこで少し立ち止まって、自分のイライラを自覚し、「ちょっと再評価してみよう」とトライしてみました。
「今、私はこの気持ちを感じる必要があるかな」と問いかけてみると、「私の言ったことを子どもたちが聞いていないのは、単に遊んでいるのが楽しくてやめたくないからで、私への敬意は関係ない」と気づくことができました。そう考えると、自然と私の怒りも収まってきたのです。
怒りの感情が収まると、冷静に考えを整理することができ、その場で必要なことは「子どもに私の言うことを聞かせること」ではなくて、「部屋を片づけさせること」だと気づけました。
なので、ちょっとやり方を考えて、子どもたちに「今から片づけ競争を始めます」と伝えました。「部屋の中のこっち半分はママ、こっち半分はみんなで片づけます。どっちが早いか競争です。ヨーイドン!」という感じで私が片づけを始めたら、子どもたちも一生懸命やってくれて10分くらいで片づけが終わりました。
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