誰でもできる「ネガティブに支配されない」思考法 小児精神科医が提唱、新しい心理的アプローチ

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これは、再評価が成功した例で、実際には、育児で大変な毎日の中でこんなにうまくいくことばかりではないですが、自分の感情や状況を捉え直すことで、ネガティブな要素をポジティブに変えていけるのです。

再評価は、私たちが日常の中で無意識にやっていることなのですが、実はこれがうまい人と下手な人がいることがいることがわかっています。

私たちが行った実験では、悲しい表情で泣いている人の写真を見てもらい、「この写真を見て、なるべくネガティブじゃなくてポジティブに感じられるようにいろいろと考えてみてください」という課題を出しました。

すると、「この2人、泣いていても、久しぶりに再会して泣いているのかもしれない」と、物語のようなものをつくったり、「何か悪いことがあったようだけど、この人たちは無事でよかった」とポジティブな事実に気づいたりと、ネガティブな気持ちを軽減できる人もいます。

一方、泣いている人の写真を見て、ネガティブな気持ちのまま、どうしてもポジティブな方向に気持ちが向かわない人もいます。また、再評価が上手な人とうまくできない人を比べても、脳機能の違いがあることが私たちの研究でわかっています。

再評価は繰り返すことで上達していく

再評価が苦手だと日常生活で気持ちの切り替えが難しくなります。

どんな人でも必ず嫌なことはあるわけです。そのときに毎回ネガティブな気持ちになっていると、気分転換がなかなかできなくて悶々としてしまうわけです。そういう人はやはりうつ病のリスクが少し高くなります。

ただ、心配しすぎる必要はありません。再評価は練習を繰り返すことでだんだん上達していくことがわかっています。

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実際に、再評価を繰り返し練習し、できるようになってきた人の脳をMRIでスキャンすると、はじめの頃より、前頭前野と扁桃体の働きのコラボレーションが活性化しているのです。

ネガティブな気持ちが湧いてきた瞬間に、いったん立ち止まって考えるのは難しいので、最初のうちは、「後で振り返る」ことから始めるといいと思います。

悲しみや怒りの気持ちが起こったとき、その場で再評価できなかったとしても、30分くらい経って落ち着いてきた段階で、「あのときはどういう気持ちだったかな」「どんな考えが影響してそういう気持ちになったのかな」と振り返る。そのうえで、気持ちや状況を捉え直せないかを試してみるのです。

このような振り返りを重ねて、コツをつかんでくると、「その場」での再評価ができるようになってきて、イライラとした気持ちや悲しい気持ちに支配されにくくなってきます。

ちょっとしたことで落ち込んでしまうという自覚がある人も、そうでない人も再評価の訓練をしてみることをおすすめします。

内田 舞 小児精神科医、ハーバード大学医学部准教授、マサチューセッツ総合病院小児うつ病センター長

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うちだ まい / Mai Uchida

小児精神科医、ハーバード大学医学部准教授、マサチューセッツ総合病院小児うつ病センター長、3児の母。2007年北海道大学医学部卒業、11年イェール大学精神科研修修了、13年ハーバード大学・マサチューセッツ総合病院小児精神科研修修了。日本の医学部在学中に、米国医師国家試験に合格・研修医として採用され、日本の医学部卒業者として史上最年少の米国臨床医となった。

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