私は、世の中の意思決定や資源配分に用いられているような、さまざまな社会制度を、アルゴリズムと捉えて、それをデータの力を使ってよりよい形に組み替えていくにはどうしたらいいかを研究しています。
「今の仕組み、ルールは本当に意味があるのだろうか」という素朴な疑問について、データ分析を使って問い直し、答えを出していくのです。専門としているテーマの1つが、教育政策です。
進学校に入っても学力は上がらない
1つ、研究の具体例を出してみます。
教育について、私たちが思い浮かべる素朴な疑問として、「学歴に意味があるのか」があります。私たちは、有名で入るのが難しい進学校に入るために、お金も時間も注ぎ込み、一生懸命勉強をする。そんな大変な日々を送る中で、「こんなに頑張って勉強する意味があるのだろうか」と、誰でも1回くらいは思ったことがあるはずです。
そういう教育に関する素朴な疑問に、データを使って答えていきます。使用したのはアメリカの自治体が収集している、子どもの学力に関するデータです。
ニューヨークには全米屈指のエリート高校がいくつもあり、入学には厳しい学力基準が課せられます。この選抜過程に注目し、ぎりぎりで合格した人とわずかに点が足らずに不合格になった人の「その後」を追いました。合格点のボーダー付近の人たちは、ちょっとした偶然が合否を分けているので、学力はほとんど同じだと捉えることができます。
そのため、彼らの将来の学力や進学先を比較することで、「学歴の効果」を調べられるのです。
この調査によって、意外な事実が判明しました。
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