渡辺さんがダニや虫に刺されたときの塗り薬として勧めるステロイド外用薬は、医療機関で処方される薬でなくてもかまわない。薬局やドラッグストアで売られているもので十分だという。
選び方のポイントは、“ある程度、効きめに強さのあるもの”。商品名でいえば、「フルコートf軟膏」(田辺三菱製薬)や、「リンデロンVs」(シオノギヘスルケア)などだ。どれがいいかわからなければ、購入時に薬剤師や登録販売者に聞いてみよう。
また、いつ虫に刺されても対応できるよう、置き薬として一家に1本常備しておくといいかもしれない。子どもが虫に刺されたときも「(子ども用のものではなく)大人用のものを使って大丈夫です」と渡辺さんは話す。
虫刺されで使うステロイド外用薬とは、どんな薬なのか。
ステロイド薬とは、副腎で作られる副腎皮質ホルモンの1つ、ステロイドホルモン(副腎皮質ホルモン)をベースに合成した薬効成分の通称だ。炎症を抑える作用がある。
炎症を抑える市販の塗り薬のなかには、ステロイドが含まれていない(非ステロイド性の)外用薬もあるが、「虫に刺されたらステロイド外用薬を塗る」が世界のスタンダードであり、「非ステロイド性では効果がない」と渡辺さんは語気を強める。
「炎症を抑えるもので、ステロイド外用薬に優るものはありません」
ステロイド薬というと副作用を心配する声もあるが、「内服薬と比べて、外用のステロイド薬の体内吸収率は微々たるものです」と渡辺さん。
「かゆみのある初期の段階に強めのステロイド薬をしっかり塗れば、たいていの虫刺されや毛虫皮膚炎によるかゆみや炎症は収まります。日本だけが、ステロイド薬に対する意識や使用法が消極的であり、非常に残念に感じています」(渡辺さん)
家に棲む刺すダニの種類
続いて、我々の生活に身近なダニ刺されについて、みていこう。
生活圏内に生息するダニは、ヒョウヒダニ(チリダニ)、コナダニ、ツメダニやイエダニだ。ダニの調査に携わって50年以上になる高岡さんは、「このうち人を刺すのはツメダニとイエダニです。畳やカーペットに潜むのがツメダニ。梅雨どきからや秋口に増殖します。このツメダニのエサとなるのが、ほぼ1年中見られるヒョウヒダニやコナダニなどです」と言う。
そして、こう続ける。
「イエダニは、ネズミに寄生する吸血性のダニで、住居内にネズミが潜んでいるような環境であれば、イエダニもいると考えたほうがいい。何よりダニの生息条件を把握し、正しい知識を持つことです」
ダニがいる環境に長くいるほど刺されやすい。このため、長時間家にいる主婦がダニに刺されることが多いそうだ。
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