音楽サブスクで頻発「再生キャンペーン」の是非 流しっぱなしで楽曲が聴かれていなくてもOKか
一方で、高橋氏は現状を過渡期とも分析する。再生キャンペーンはコロナ禍でファンとのミーティングやライブなどの活動ができない中、苦肉の策として活発化した面があるからだ。「もっとよい形にしたい。ファンとアーティストが一緒に楽曲を聴き、コメントもできるなど、熱量が高まる交流の場をつくりたい」。
外資はどう考えるのか。大手の一角、アマゾンはLINE MUSICと方向性が異なるようだ。アマゾンミュージックジャパン ディレクター&GMの島田和大氏は、アーティストとファンの結びつきを強めるマーケティングの重要性を指摘する。
例えばCDでも、それぞれ特典が異なるバージョン違いでの販売がマーケットを支えているのも確かだ。音楽を聴く目的だけでなく「このアーティストのグッズがほしい」というファンの行動や心理は自然で、マーケティングとして否定されるものではないという。
アマゾンは再生回数に重きを置かない考え
そのうえで、アマゾンは再生回数を中心に置いたマーケティングは積極的には実施しない考えだ。「恣意的に数字を操作していると思われてしまう可能性もある。ソーシャルなどで楽曲を友人に紹介するほうが、アーティストにとってもファンにとってもプラスになるだろう。1人が1000万回聴くのと、1000万人が1回聴くことは違う」(島田氏)。
アマゾンは徹底して付加価値を打ち出し、競争する構えだ。特典映像の製作からアーティストによるライブ配信、ポッドキャスト番組の発信。ECにおけるCD販売と関連したキャンペーン、3月に開設した渋谷スタジオを活用したイベントなど、多方面で企画を打ち出していくという。
アーティストとファンを「再生回数」で結び付けるのはマーケティングとして有効な一手だろう。しかし、現在はYouTubeやインスタグラムでのライブなど、アーティスト自身がプラットフォームを通じてファンと交流できる環境も整っている。さらに、コロナ禍で開催できなかった音楽フェスやライブなどのリアルのイベントも、2022年は徐々に復活している。
今後はサブスク上で再生を促すだけでなく、ネットとリアルの双方で、より強固に、継続して盛り上がれるキャンペーンやイベントが求められる。それぞれのサービスがアーティストと深く交流し、より楽しめる場に進化していくことを、ファンは心待ちにしているのではないだろうか。
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