テレ東が「映像を捨てた」!大胆勝負に出る背景 「音声のみ」だから生まれる臨場感で拓く新境地

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
映像なしでテレビはどこまで勝負できるのか。右に写るのがディレクターの上出遼平氏(写真:Spotify)

もしテレビが最も大事な「映像」を捨てたら、ユーザーに何を伝えられるのか――。そんな大胆な試みがテレビ東京で始まった。世界最大の音楽ストリーミングサービス「Spotify(スポティファイ)」と連携し、4月からオリジナルの音声番組(ポッドキャスト)の配信に乗り出したのだ。

第1弾は地上波でも人気の高い「ハイパーハードボイルドグルメリポート」の音声版。テレビ版では「ヤバい奴らのヤバい飯を通して世界のリアルを見る」というテーマのもと、ディレクターが世界の危険地帯に足を運んでいる。2017年以降、不定期特番として放送されており、ギャラクシー賞・優秀賞の受賞歴もある。

ロサンゼルスではギャングが対立し、殺人が繰り返される地域を取材。「飯、一緒にどうですか」と声をかけ食事をともにすると、ギャングのメンバーから「いつも最後の飯だと思っている」「ギャングでいいことなんて何もない」などと本音が漏れ、過酷な生きざまが見えてくる。

ほかにも、不法入国を試みる難民や、「イスラム国の兵士を6人殺した」と告白する青年、スラムやカルト教団に身を置く人々など、さまざまな「飯」を扱っている。演出を極力抑えた映像からは異常な緊張感が伝わる。テレ東の中でも攻めに攻めたドキュメンタリーなのだ。

音声版では国内の「さまざまな飯」が舞台

新たに始まった音声版は国内で取材を敢行している。右翼・左翼団体の人々やセックスワーカー、特殊清掃員(孤独死や事件・事故の現場、五味屋敷などの清掃を専門に行う事業者)、夜逃げ屋などに会い、食事をともにして話を聞く。

ディレクターを務める上出遼平氏は「国内なので登場する人物は見かけたことがある人や、同じ街に住んでいる人かもしれない。距離的に近くても近寄りがたい人が取材対象なので、海外と違うインパクトがある」と語る。

次ページ「音声のみ」だから生まれる臨場感
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事