テレ東が「映像を捨てた」!大胆勝負に出る背景 「音声のみ」だから生まれる臨場感で拓く新境地

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テレ東がこれら音声番組でターゲットとしているのは、主にテレビから離れてしまった消費者だ。

「これまでさまざまな動画メディアをやってきたが、テレ東のコンテンツが届いていない消費者はたくさんいる。テレビは一方向の情報提供という面が強いので、音声ではユーザーから感想をもらうなどの交流も重視していきたい」(テレビ東京コミュニケーションズ メディア事業開発本部の井上陽介氏)。

「地上波だけではない、表現する場を貪欲に求めていかないと」(上出氏)。ネット配信の強化にとどまらず、映像制作のノウハウを生かして未経験の作品作りにも打って出る。テレ東はテレビ局として大変革期を迎えているのかもしれない。

「ながら聴き」に向かない番組はどう刺さる

配信するスポティファイにとっても、今回の提携は音声番組ファンを広げるための重要な試みといえる。スポティファイジャパンで音声コンテンツを統括する西ちえこ氏は「チームの皆が『ハイパー』を聴いて驚いた。音の使い方にこだわっていて非常に新鮮。海外でも類似コンテンツはない」と語る。

現在、音声コンテンツは比較的若い層が聴取している。また、何かをしながら聴く「ながら聴き」が多い点も特徴だ。一方の「ハイパー」は、もとが高齢層の多いテレビのコンテンツであり、没入感ゆえに「ながら聴き」に向くとも言いにくい。どんなユーザーに刺さるのかは、スポティファイにとっても未知数だ。

「(テレ東とは)第2弾、第3弾と複数の取り組みを進めていく。サポートも積極的にやっていきたい」(西氏)。今後もテレ東のような国内でのパートナーとのコラボに加え、サポートプログラムやセミナーなど一般クリエイター向けの支援も広げ、音声コンテンツをさらに成長させる考えだ。

映像という最大の武器を捨て、世界でも類を見ないアプローチで音声に挑むテレ東と、それに共鳴したスポティファイ。両社のタッグによって「耳の可処分時間争奪戦」は一段と過熱しそうだ。

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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