音楽サブスクで頻発「再生キャンペーン」の是非 流しっぱなしで楽曲が聴かれていなくてもOKか

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スマホに表示されたLINE MUSICと楽曲ランキングの画面
所定の楽曲再生回数を達成すると特典がもらえる「再生キャンペーン」が多く実施されているLINE MUSIC(記者撮影)

「曲を777回以上聴いていただいた方に、もれなく特別グッズをプレゼントします!」――。近年、主にLINE MUSICなどの音楽サブスクリプション(定額課金)サービス上で再生キャンペーンが頻発している。

仕組みはシンプルだ。ユーザーは期間中、指定された楽曲をとにかく聴く。500回などと回数をクリアしたら、再生回数がわかる画面をスクリーンショットに撮って応募し、抽選などでステッカーやポスターといった特典グッズを受け取る流れになっている。

再生キャンペーンは人気アーティストも積極的に実施している。直近ではDa-iCEが「Promise」で、BE:FIRSTも「Scream」、JO1も「ALL HOURS」で展開している。BTSなどもキャンペーンを投入してきた経緯がある。

レコード会社やアーティスト側は再生回数の伸びが期待できる。ファンも曲を聴いて応援し、特典を手に入れる楽しみが増える。サブスク事業者はイベントによってサービスが盛り上がる効果がある。

いいことずくめにも思える再生キャンペーンだが、業界からは疑問の声も浮上している。いったいどんな課題があるのか。

再生回数の「水増し」なのか?

本来の音楽を聴く目的から外れてしまっているのではないか。影響を懸念するのはビルボードジャパン(阪神コンテンツリンクが運営)だ。ビルボードはCD販売やダウンロード、ストリーミング(逐次配信)再生、Twitterへの投稿、ミュージックビデオ視聴、カラオケ歌唱など、複数の指標を基に複合チャートを発表している。

ファンにとって、キャンペーン参加の主な目的は「楽曲を聴くこと」ではなく「特典を受け取ること」になる。3分間の楽曲の場合、仮に500回なら再生に25時間、777回なら約39時間と目標達成にはかなりの時間が必要だ。中には7777回聴いて特典をもらう例もある。再生に388時間以上かかるため、聴かずに流しっぱなしにするユーザーが多いだろう。

このように、楽曲が聴かれていなくても、チャートの順位に影響してしまう可能性があるわけだ。ビルボードは、キャンペーンで再生数が突出した場合には、調整をかけてチャートを算出しているという。

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