音楽サブスクで頻発「再生キャンペーン」の是非 流しっぱなしで楽曲が聴かれていなくてもOKか
マーケティング効果についての疑問もある。期間中は再生数が突出して伸びるものの、「ダウンロードやCDセールスが伸びるなど、ファン層の拡大につながっていないのではないか」(ビルボードの高嶋直子編集長)という。
ビルボード事業本部の礒崎誠二上席部長は、ファン層を広げる方向にシフトすべきだと主張する。「楽曲を何百回も聴くのはコアなファン以外は厳しく、こうした手法はファンの疲弊を招く。楽しみながら楽曲やアーティストに関われるようにしていくことで、新たなファンも増えていく」(礒崎氏)。
サブスク事業者側はこの課題をどうとらえているのか。「アーティスト側からの働きかけや、きっかけ作りは重要」と話すのはLINE MUSIC取締役COOの高橋明彦氏だ。
サブスクは曲数が多い。2015年に150万曲超でスタートしたLINE MUSICも今や9000万曲超をそろえる。ユーザーはどんな楽曲もすぐに聴けるが、積極的にアピールしなければ埋もれてしまいがちだ。
実際、超有名アーティストを担当するレコード会社関係者は「人気が確立したと思われているアーティストでも、維持することは大変。TikTokでバズるように、とりあえずキャンペーンを打つのが正直なところ」と明かす。
LINE MUSICでキャンペーンが多い理由
キャンペーンの多くがLINE MUSICで実施されるのには理由がある。再生回数を確認できることはもちろん、サービスが国内限定で、有料会員数は国内勢で断トツの240万人(2021年10月時点)を誇る。ユーザーの半数は10~20代の若年層で、最近、多くのヒット曲が生まれるTikTokをはじめ、YouTubeなどのSNSと親和性が高い。
再生キャンペーンは、アーティストがSNSでファンに直接アピールでき、ファンも再生するだけなのでハードルは低い。マーケティングの場として、影響力の強いLINE MUSICはうってつけだった。
多くのアーティストがキャンペーンを実施し、サービスが盛り上がることは魅力の1つでもある。「いろいろなアクションがあっていい。ユーザーとアーティストの活動の結果次第でランキングが変わってくる。LINE MUSICはそんな場所だと思っている」(高橋氏)。
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