83歳創業者が語る「パタゴニアを売却する」理由 約4300億円相当の資産を2団体に譲渡
裕福な企業経営者が、慈善活動や政治的目的のために会社を手放したという最近の記憶では、共和党の献金者であるバレー・セイドが唯一の例である。しかし、セイドは自分の電子機器会社を100%非営利団体に寄付するという異なるアプローチをとり、気候変動への対策を阻止するための活動など保守的な活動への資金として16億ドルを寄付し、個人的には莫大な税制上の利益を得たのである。
資産の大部分を生前贈与することで、シュイナード一家――イヴォンと妻のマリンダ、そして2人の子ども、フレッチャーとクレア(いずれも40代)――は、国内で最も慈善活動に熱心な家族の1つとしての地位を確立することになった。
「これは取り消しができないコミット」
パタゴニアはすでにホールドファスト・コレクティブに5000万ドルを寄付し、今年はさらに1億ドルを寄付する予定であり、この新組織は気候変動に関する慈善活動の主要な担い手になる。
モズレーは、この物語は彼のキャリアの中で見たことのないものであったと語った。「私の30年以上にわたる財産設計の中で、シュイナード一族が行ったことは、本当に驚くべきことだ」と彼は言う。「これは取り消しができないコミットだ。彼らはもう二度ともとに戻すことはできないし、もとには戻したくないのだ」。
シュイナードにとっては、事はもっと単純であり、後継者の問題に満足のいく解決をもたらすものだった。
「会社が欲しいと思ったことはなかったから、会社をどうしたらいいのかなんてわからなかったんだ」と、ワイオミング州ジャクソンの自宅から彼は語った。「ビジネスマンになりたくなかった。今、私は明日死んでも大丈夫だ。そして会社は今後50年間正しいことを続けようとしている。私はそこにいる必要はない」。
ある意味、パタゴニアを失うことは、シュイナードにとってそれほど驚くべきことではない。
1960年代、カリフォルニアのヨセミテ・バレーでロッククライマーの先駆者として活躍したシュイナードは、車で生活し、1かけら5セントで買った、傷んだキャットフードを食べていた。