「非人道」だったアパレル業界に起きた変化 高級ブランドが「人工ファー」に注目する理由

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ファッション業界においてもやっと、ものづくりが倫理的であるかどうかが問われる時代になってきました(画像:phoelix / PIXTA)

皆さんは、洋服を買うときに何に重点を置きますか? 価格、品質、デザイン、あるいはブランドでしょうか?

これらに加えて、近年ファッション業界で「エシカル」という概念が浸透しはじめているのをひしひしと感じています。エシカルとは、直訳すると「倫理的」「道徳上」という意味です。

伊アルマーニがあえて「人工ファー」を使い始めた

エシカルなファッションの1事例としては、イタリアのファッションブランドであるアルマーニが、2016年の秋冬コレクションから、リアルファーを一切使用しない「NO FUR宣言」を行ったことが挙げられます。動物の毛を生きたまま剝ぎ取ることが多いリアルファーは、動物愛護の観点から見ると倫理的であるとは言えません。

そこでアルマーニ以外にも、ラグジュアリーブランドの中にはあえて人工素材でファーを製造するところが増えており、最近ではフェイクファーという名称を改めて、エコファーという名称がつけられています。このような、動物を犠牲にしない“クルーエルティフリー”もエシカルの1つです。

さらに、開発途上国の商品を適正な価格で取引するフェアトレードや、商品の産地や製造過程の公開、さらには天然素材やオーガニックコットンを使った製品作りなどもエシカルというくくりで捉えることができます。

先日、私は一般社団法人エシカル協会が開催している講座に登壇し、ファッションジャーナリストの生駒芳子さんと対談させていただきました。生駒さんは女性向けファッション誌『VOGUE』『ELLE』の副編集長を経た後に、『マリ・クレール日本版』の編集長に就任。華やかなルックスや洗練された立ち居振る舞いは、映画『プラダを着た悪魔』で描かれた敏腕編集長を思わせますが、生駒さんは映画に登場していた物欲にまみれる悪魔ではなく、「エシカルを着た悪魔」を自称されています。この呼び名は、悪魔が共感するくらいの遊び心を持たなければ、エシカルの裾野は広がっていかないという考え方に基づいているそうです。

生駒さんがエシカルに目覚める決定打となったのは、セレブの中でも特に徹底的にエシカルを貫いている世界的ファッションデザイナー、ステラ・マッカートニーのレセプションパーティに出席したこと。

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