「非人道」だったアパレル業界に起きた変化 高級ブランドが「人工ファー」に注目する理由

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1996年には、製品で使用しているコットンをすべてオーガニックに切り替えました。販売価格は上がりましたが、業界を変えていくためには影響力のある企業がアクションを起こさなければならないという考えから、この決断に至ったそうです。

パタゴニアはフェアトレードの導入も積極的に行っています。フェアトレードとは、途上国の原料や製品を適正価格で継続的に購入することで、生産者や労働者の生活改善と自立を促していくという制度。一定基準を満たした縫製工場は公的な団体から認証を与えられており、現在同社では約200の製品がフェアトレードUSAの認証を受けた工場で縫製されています。

エシカルという観点から見ると、ファッション業界は他の業界に比べて遅れを取ってきました。無添加の商品に関しても、まずは体内に入れる食の安全が叫ばれるようになり、そこから肌に触れるシャンプーや化粧品へと浸透が進み、近年になってようやく、体にまとうファッションにも順番が回ってきたように思います。

「エシカル」なファッションベンチャーも続々

アルマーニやパタゴニアといった影響力のある企業がアクションを起こすと同時に、勢いあるベンチャー企業が新しい波を起こすことも大切です。

2015年にスタートした「THE VENTURE」は、世界にポジティブな変化をもたらす若手起業家の支援を目的に設立され、30カ国の代表がエントリーしています。その中でも、エシカルを軸にビジネスを展開する企業が多く見られます。

たとえば、スペイン代表の企業は海の廃棄物からサングラスを作り、ナイジェリア代表の企業はリサイクルしたゴミをポイントに換えて商品の購買につなげる仕組みを作っています。さらに、日本代表で、私の手がけるファッションブランド「ファクトリエ」でも、工場が適正な利益を得られ、お客様は適正価格で購入できるビジネスモデルを構築しています。

それぞれに切り口は違うものの、人や社会、地球環境に配慮した社会を形成するという部分においては共通しています。今後も、エシカルというカテゴリーに当てはまるブランドは国内外で増えていくことでしょう。

資本主義社会でビジネスを成立させるためには、利益も追い求めなければなりません。ただ、それによって誰かが泣いているのを知った以上、見て見ぬ振りをするわけにはいきません。いつしかエシカルという言葉を使わずとも、当たり前に倫理や道徳が重んじられる社会が実現できるよう、ファッション業界の“分厚いカーテン”を取り払っていくお手伝いができればと思います。

山田 敏夫 ファクトリエ代表

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やまだ としお / Toshio Yamada

1982年熊本県生まれ。大学在学中、フランスへ留学し、グッチ・パリ店で勤務。卒業後、ソフトバンク・ヒューマンキャピタル株式会社へ入社。2010年に東京ガールズコレクションの公式通販サイトを運営する株式会社ファッションウォーカー(現:株式会社ファッション・コ・ラボ)へ転職し、社長直轄の事業開発部にて、最先端のファッションビジネスを経験。2012年、ライフスタイルアクセント株式会社を設立。2014年中小企業基盤整備機構と日経BP社との連携事業「新ジャパンメイド企画」審査員に就任。2015年経済産業省「平成26年度製造基盤技術実態等調査事業(我が国繊維産地企業の商品開発・販路開拓の在り方に関する調査事業)」を受託。年間訪れるモノづくりの現場は100を超える。

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