83歳創業者が語る「パタゴニアを売却する」理由 約4300億円相当の資産を2団体に譲渡
「ある日、彼は私にこう言ったんだ。『ライアン、もし君たちがこのまま動かないようなら、『フォーチュン』誌の億万長者リストを手に入れて、電話をかけ始めるよ』ってね」とゲラートは語った。「そのとき、彼は本気だとわかったんだ」。
パタゴニアのオーナーシップの将来が明らかになった今、同社は気候変動に取り組みながら、同時に収益性の高い企業を経営するという高い野望を実現しなければならない。
専門家のなかには、シュイナード家がパタゴニアと経済的な利害関係がない状態では、同社と関連事業体が焦点を失いかねないと警告する人もいる。子どもたちはパタゴニアの給与支払名簿に載り続け、シュイナード夫妻は快適な生活を送るのに十分な資金を持ってはいるが、同社はもはや一家に利益を分配することはないだろう。
ノースイースタン大学ファミリービジネスセンターのエグゼクティブディレクター、テッド・クラークは、「資本主義が成功するのは、成功への動機付けがあるからだ」と言う。「もし、金銭的なインセンティブをすべて取り除いてしまったら、一族は、古き良き時代への憧れ以外、基本的に何の興味も持たなくなってしまうだろう」。
創業者亡き後の問題を解決
シュイナードは、ホールドファスト・コレクティブがパタゴニアの利益をどのように分配するかについて、野生の土地の保護など自然を基盤とした気候変動対策に焦点を当てると述べている。
また、501(c)(4)団体であるホールドファスト・コレクティブは、パタゴニアが草の根活動家に資金を提供してきた歴史を踏まえつつ、さらにロビー活動や政治キャンペーンへの寄付も可能である。
シュイナード夫妻にとっては、この選択は創業者亡き後のパタゴニアがどうなるかという問題を解決し、会社の利益を地球環境保護のために活用することを保証するものである。
「自分の人生を整理できたようで、大きな安堵を感じている」とシュイナードは語った。「私たちにとって、これは理想的な解決策だった」。
(執筆:David Gelles記者)
(C)2022 The New York Times
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