メタバースで「クルマ買う」はリアルな話なのか? 開発から販売まで今、考えられる3つの可能性

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Epic Gamesが開発するゲームエンジンである「Unreal Engine(アンリアルエンジン)」のウェブサイトでは、Fortniteの中でいかにしてフェラーリを“リアルかつ精巧に作り上げていくか”の動画があり、その技術とプロジェクトの規模の大きさに驚かされる。

フェラーリ「296GTB」
フェラーリ「296GTB」(写真:Ferrari)

 

メタバースで車を売るには?

今の時代、インターネットを通して共通の趣味嗜好を持つ人とコミュニケーションを取ることは、簡単である。その代表格がSNSであろう。SNSからメタバースへと、コミュニティ作りや双方向のコミュニケーションがさらに発展する形は、イメージしやすい。

では、自動車メーカーはメタバースとどうかかわればいいのだろうか。メタバースをどう捉えるかで、考え方は大きく2つあると言える。

1つめは「リアル=主/メタバース=従」という考え方だ。メタバースをリアルマーケットに向けた接点と捉える。もう1つは「メタバース=主/リアル=従」という考え方。メタバース内単独で売上・利益を得ることを狙う動きだ。

自動車メーカーはリアルで巨大なビジネスを行っているため、前者の「リアル=主/メタバース=従」となるケースが多いだろう。そのうえで、以下3点の検討を進める。

【1.販売店機能】

まずは、シンプルに考えてみよう。メタバース内で“リアルな車を売る”という発想だ。実際にテスラはオンライン販売のみだし、ボルボも日本で一部オンライン販売を開始している。メタバースによって、オンライン販売が一気に進む可能性はあるだろう。

メタバースでの販売がこれまでのオンライン販売と異なる点として、試乗体験やリアリティのある内外装チェックなどが考えられる。商談フェイズでもアバターを介してスムーズなコミュニケーションが可能となれば、ポテンシャルは十分あるといえよう。

【2.デジタル空間での評価のフィードバック】

新型車開発でデザインを検討するとき、複数のサンプルを被験者に見せて評価を得る調査手法がある。一般にデザインクリニックと呼ばれるものだ。

この調査では外観デザインだけでなく、シートの座り心地やインパネの操作性など、さまざまな要素の評価を得られる一方、調査コストがかかる。特に海外で実施する際には、実物大のモックアップを輸送する必要もあり、費用がかかるものだ。

しかし、このデザインクリニックをデジタル空間で行い、その結果をリアルな世界にフィードバックできれば、デザイン策定までのPDCAサイクルの高速化が見込める。

【3.ブランディングの機会】

筆者は3つの中で、これがもっとも重要だと思っている。先述のFortniteやコロナ禍で爆発的に売れた“あつ森”こと「あつまれ どうぶつの森※」で、もしも車が購入できたらどうだろう。ゲーム内で獲得できる通貨が、現実の通貨に換金できれば、新しい市場が生まれるだろう。

※任天堂より2020年3月発売。ゲームタイトルだが"メタバース的な要素を一部持つゲーム"として紹介されることも多い。ボスを倒すといった明確なストーリーや目的はなく、無人島に住む中で好きな時間を過ごす。

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