斜陽のイギリスを輝かせたエリザベス女王の軌跡 「大王」と呼ばれるにふさわしい在位70年

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これは国民の誤解を解く必要がある。エリザベス女王は、1977年にシルヴァー・ジュビリー(在位25周年記念)を祝って以来、国民は自分たちのことを十分に理解してくれていると「あぐらをかいていた」のかもしれない。

そこで女王は、1997年から開設していたイギリス王室のホームページを充実化させるとともに、紙媒体でも王室の活動に関する国民向けの広報を拡大していった。21世紀に入ると、ツイッターやユーチューブ、インスタグラムにも進出し、さまざまな媒体を通じて、王室は女王を筆頭とする王族たちの情報を最新の写真や映像とともにアップした。

18人の王族で年間3500件の公務をこなす

それを通じて、国民はあらためて王族たちの猛烈に忙しい生活を垣間見たのである。18人前後の王族だけで年間3500件を超える国内外での公務をこなし、彼らが分担してパトロン(総裁・会長)を務める各種団体の数は3000にも及んでいたのである。

その当時でも90代を超えたエディンバラ公が800、80代の女王が600以上の団体のパトロンをそれぞれ担っていた。しかもそれは決して「お飾り」などではなく、王族たちは毎日こまめに団体の会合や慈善パーティーにも「はしご」で出席していた。

ダイアナ事件から15年を経た2012年、国民は世界中を駆け回って自分たちや世界中の人々のために日夜努力するエリザベス女王のダイヤモンド・ジュビリー(在位60周年記念)を心からお祝いしたのである。さらにその10年後、2022年6月にはイギリス史上初のプラチナ・ジュビリー(在位70周年記念)の式典も盛大に開かれ、国民はこの偉大な女王の慶賀をわがことのように祝った。

エリザベス女王をはじめイギリス王室のメンバーは、文字通り世界を駆け回っている。学生時代から地球環境問題に関心を持ち、学術、芸術、建築環境など、さまざまな問題に一家言をもつチャールズ皇太子。馬術競技でモントリオール・オリンピック(1976年)にも出場し、今や英国オリンピック協会の総裁を務めるアン王女。そして2011年に盛大なロイヤル・ウエディングを挙げ、3人の子宝に恵まれたウィリアム王子とキャサリン妃。

しかし、何より即位から70年間にわたり世界中の人々とふれあってきたのが女王陛下である。女王はこの間に130回もの外遊をおこない、128カ国を歴訪した。単純計算すれば、女王は地球を42周できるだけの距離を移動してきた。

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