京都の老舗企業のように、すでに立派な歴史遺産・文化遺産を持つところは別として、「日本で新しいラグジュアリーをつくるなんて無理」という声をしばしば耳にします。ヨーロッパで兆円単位のビジネスを行う巨大ラグジュアリーコングロマリットを想定すれば、そのような声が出るのも無理はありません。
しかし、そのような巨大コングロマリットにしても、元をたどれば1990年代から形成・発展していった形態に過ぎません、各ブランドの大半は、傘下に収まる前は、家族経営でニッチな市場を握っていました。
ラグジュアリースタートアップの芽生え
新しい時代のラグジュアリーはむしろ、小さなスタートアップから始めやすいのです。かつては閉鎖的・特権的なものだったラグジュアリーは、来るべき未来においてはオープンで、ローカル文化に根づき、つくり手自身にも尊厳を感じさせ、購買者にも深い意味を与える、透明性の高いものになるでしょう。そのような新しいラグジュアリーの可能性や萌芽は、日本にも見ることができます。
日本発の「新しいラグジュアリー」企業として筆頭にくるのが、「マザーハウス」です。1981年生まれの山口絵理子さん率いる同社は、「途上国から世界に通じるブランドをつくる」という目標を掲げ、2006年に設立。以来、バングラディシュ、ネパール、インドネシアなどで、それぞれの土地の素材や文化を活かしたフェアなものづくりを行っています。丁寧につくられた上質なバッグやジュエリーを中心に扱うほか、最近ではチョコレートも扱っています。