「模造品」をも味方に付けるハイブランドの超戦略 グッチは2018年に「本物と偽物とのコラボ」実施

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フリマアプリなどでも、ハイブランドのコピー品が出回っています(写真:polkadot/PIXTA)
これから2030年にかけて、世界・経済・ビジネスなどを考えるうえで重要な考え方の1つが「ラグジュアリー」です。「はいはい、自慢が趣味の、品のない人たちが好むやつね」「高級ブランドが使いたがる言葉でしょ」と思う人もいるかもしれません。しかし、いま若い世代や感度の高い人たちが注目する「新しいラグジュアリー」は、そうしたものとは一線を画します。
またその中心を担うのは、数年前には「ビジネスで何の役に立つんだ?」「もっと使える知識を教えるべき」とさえ言われた人文系の分野。つまり歴史や文学、哲学などの知識こそ、これから大いに必要とされるのです。
「新しいラグジュアリー」とはどんなもので、いま世界ではどんな動きが始まっているのか。人文系の内容を中心としながら、IT企業の戦略責任者やマーケター、テクノロジー分野の投資家などからも称賛され、各媒体の書評でも多く取り上げられている書籍『新・ラグジュアリー ――文化が生み出す経済 10の講義』から、3回にわたってお伝えします(3回目)。
1回目:ビジネスに歴史や美術、文学の視点が必要な理由
2回目:地元の「がごめ昆布」をコスメにした起業家の挑戦

21年の差し止め実績は34万点

先日、ラルフローレンなどの偽ブランド品を、フリーマーケットアプリで販売するために500点以上も所持していた会社員の女性が、商標法違反の容疑で書類送検されるという事件がありました。

いわゆるハイブランドを中心とした従来のラグジュアリービジネスは、偽物(フェイク)の問題にも常に悩まされてきました。本物に高い価値が与えられる一方で、偽物をいかに排除していくかは、こうしたビジネスにとって大きな課題のひとつ。財務省の統計によれば、2021年上半期の商標侵害品の輸入差し止め実績は34万点で、前年同期比8割増とのこと。取り締まりの目をすり抜けている偽物も相当数あると推測されます。

ハイブランドの偽物には、高品質で精巧なものも多くみられます。とりわけ「スーパーコピー」と呼ばれる偽物は、たとえば時計の場合、なかには品質保証までつくものもあって、素人の目で見分けることはほぼ不可能だといえます。

現在、多くのハイブランドがリセール市場(二次流通市場)にも参入しています。その主な目的は「市場から偽物を排除すること」。もはや本物をつくったブランド関係者しか見分けられないため、ブランド側が直接、リセール市場に参入し、「認定中古」と呼ぶジャンルをつくって本物の価値を守り続けているのです。

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