「ベンチャー投資マネーの膨張」に漂う期待と不安 数字と図表で徹底解説!ベンチャー最前線②

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新興上場企業の資金調達支援を行うグロース・キャピタルが未上場ベンチャーの役員約300人に聞いた調査によれば、1年後の資金調達環境が「悪化する」「やや悪化する」と答えたのが約37%、これを踏まえて成長戦略を修正する企業が6割弱に上った。

「岸田スタートアップ政策」への期待と不安

こうした不透明な状況ではあるが、岸田文雄政権は2022年、スタートアップ支援政策を打ち出し、「スタートアップ創出元年」をうたう。政府調達や政府系ファンドによる投資の促進、金融機関が創業者に個人保証を求めない制度の導入など、項目は幅広い。

8月にはスタートアップ担当相を任命し、年末には「スタートアップ育成5カ年計画」をまとめる予定だ。

先述の調査で政策が市場環境に追い風となるかを聞いたところ、肯定派はわずか2割強にとどまった。「政策として重視されているのはポジティブだが、どうしても投資や補助金の話になりがち」といった声も少なくない。

投資マネーばかり増えても、起業家が増えなければ、ただのバブルで終わる。大企業に眠る人材の発掘や、大学の研究成果の事業化など、裾野を広げる動きはある。逆風の中でも地道にエコシステムをつくらなければ、米国や中国の背中は遠いままだ。

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中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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