くら寿司の「100円ずし消滅」値上げに見えた死角 220円⇒165円へ値下げも進みコスト増は吸収可能?
もしこの設計通りの価格改定だとしたら、この10月の価格改定について私は「将来、よくない値上げをしてしまったと会社が悔やむ可能性が結構高いのではないか」と分析しています。理由はこれから予測される諸物価の高騰に対して、確保できたはずの値上げ財源が大幅に不足することになるのではないかという危惧からです。
計算してみるとわかりますが今回のくら寿司の110円から115円への値上げは4.5%の値上げ幅になります。これは今年7月に発表された消費者物価指数2.4%上昇と比べれば大きな値上げだと読者はお感じかもしれません。しかし企業の仕入れ価格を示す企業物価指数は実は17カ月連続で前年超えを続けていて、今年7月の上昇は前年同月比で8.6%も上がっているのです。つまりこの値上げではコストの上昇を吸収しきれない可能性が高いと私には見えるのです。
「うまい棒」は2円の値上げで長期的コスト増をカバー
消費者が値上げを受け入れてくれるかどうかについては不確定要素も多いのですが、私は「一度の値上げで長期的なコスト増をカバーできるだけの利幅を確保すること」が理想だと考えています。私から見たよい値上げの例を挙げると、この条件を満たすものとしてやおきんが販売する「うまい棒」の値上げがあります。
このうまい棒、長年続けてきた10円での販売がとうもろこしの国際価格高騰でどうにもならなくなり、今年4月についに12円に値上げをしました。「子どもの財布を直撃」と言いたいところですが、実はこの12円、子どもから見ればなんとでも吸収できる価格改定です。なにしろわずか2円ということで、他の商品の値上げのほうが値上げ金額は大きいのですから。一方で企業から見れば実に20%も価格を値上げできています。これならばしばらくの間は値上げをしなくても、やおきんは企業努力で営業を続けていけそうです。
経営コンサルタント的な視点で「よい値上げ」をしているグローバル企業の双璧がアップルとテスラです。iPhoneは円安に応じてどんどん値上げをしていますし、テスラのモデル3も2022年に入ってからは毎月のように価格が上がっています。
私はテスラのモデル3を購入するつもりで価格を眺めていたのですが、2021年の春頃に420万円台だった価格がじりじりと値上がりして直近ではほぼ600万円まで価格が上昇したことにはかなりショックを受けました。しかし気を取り直して経営評論家の視点で考えれば、商品力が強くてしかもしっかりと値上げを断行しているテスラやアップルは、世界の株式の優良銘柄であることも事実です。
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