「価値関数」というグラフを見ると、このことがよくわかります。このグラフの縦軸は心理的価値、つまり上に行くほどに「うれしい」「楽しい」という満足の感情を表しています。一方、下に行くほどに「悲しい」「つらい」という不満の感情を表します。
横軸は「利益」と「損失」の関係を示しています。右に行けば行くほど利益が大きくなり、左に行けば行くほど損失が大きくなります。
(外部配信先ではグラフを閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)
このグラフを見てわかることは、利益を得たときはゆっくりと心理的価値が上がり、損失を被ったときは即座に心理的価値が下がるということです。つまり、同じ金額の損得でも受け手の被る心理的価値の大きさが違うわけです。
この感じ方の違いが働くことによって、自分のお金を運用する個人投資家は、小さく勝っているときは「うれしい」「楽しい」を確実に獲得しようと、大きく負けると「悲しい」「つらい」を解消しようとする行動を繰り返してしまうわけです。
損小利大ができないのには理由がある
株を買ったら、その後で上がるか下がるかは誰にもわかりません。そうすると、2つの矛盾した気持ちが心の中に芽生えます。
1つは、上がるかもしれないといった期待です。もう1つは、今売らないとさらに下がるかもしれないという不安です。
このとき、損失回避性バイアスが働くと、結果的には、このまま上がるかもしれないという期待感より、売らないと下がって損をしてしまうかもしれないという不安感のほうが大きくなる傾向が強いわけです。そこで、いったん売って早めに利益確定しようという行動に出やすくなります。
逆に利益確定せずに下がると、あのときに売っていればよかったという損失回避性バイアスに、再び私たちは苦しめられます。投資とはつまり、この繰り返しなわけです。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら