動きながら考える人が動かない人より成果出る訳 運動すると創造性が増すことは科学的に立証

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スタンフォードの「創造力」リサーチ
(出所)『運動脳』(サンマーク出版)

創造性を増すには、ウォーキングよりもランニングか、もしくはそれと同じような活動により効果があるといわれている。少なくとも30分は取り組む必要がある。とはいえ、先のスタンフォード大の結果でもわかるように、ウォーキングにも効果はある。

運動で高まった創造性はどのくらい維持できるのか。創造性が高まる効果はあくまで短時間。創造力の上昇は1時間から数時間で、その後徐々に消えていく。もう一度インスピレーションを得たければ、また歩くか走るよりほかない。
一方、疲れるまで運動すると逆効果になる。運動を頑張りすぎた被験者は、そのあとの創造性のテストで成績が芳しくなかった。

運動すると脳に流れる血液が増える。それにより脳の働きが促進され、認知能力が向上して創造性も増す。だが疲れるほど運動すると、脳の血流量は逆に減る。血液が脳から筋肉へと流れを変えるためだ。

運動によって創造性が増すことは、多くのイノベーターが身をもって証明している。アルベルト・アインシュタインは、自転車を漕いでいるときに相対性理論を思いついた。ベートーヴェンはたびたび仕事の手を休めては、着想を得るために長い時間、散歩したと言われている。

チャールズ・ダーウィンは「ダウン・ハウス」という名の屋敷の周りの散歩道(彼はそれを「思索の小径(thinking path)」と呼んだ)を何時間も歩いて過ごした。進化生物学において最も重要な文献『種の起源』の着想を発展させた時期こそが、ここを散歩していた頃だという。

ジョブズの「歩きながら」会議

最近の例としては、アップル共同創業者スティーヴ・ジョブズはしばしば歩きながら会議を行った。彼は会議室のテーブルを囲んで話し合うよりも、歩きながら意見を出し合うほうが成果はあると考えた。

運動脳
『運動脳』(サンマーク出版)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

ジョブズのやり方には、フェイスブック(現メタ)創業者のマーク・ザッカーバーグや、Twitter創業者ジャック・ドーシーら、シリコンバレーの多くのビジネスエリートたちが共感を覚え、ウォーキング・ミーティングを取り入れている。

運動は、できるだけ多くのことを想起する「発散的思考」と、唯一の正解にたどり着く「収束的思考」の両方にプラスに働く。アイデアの「量」「質」ともにアップするのだ。考えごとがあるときは、ぜひデスクから離れて通勤や帰宅の時間、思索を試してみてほしい。「歩きながら考える」、きっと妙案にたどり着ける。

アンデシュ・ハンセン 精神科医

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Anders Hansen

ノーベル賞選定で知られる名門カロリンスカ医科大学を卒業後、ストックホルム商科大学にて経営学修士(MBA)を取得。現在は王家が名誉院長を務めるストックホルムのソフィアヘメット病院に勤務しながら執筆活動を行う傍ら、有名テレビ番組でナビゲーターを務めるなど精力的にメディア活動を続ける。前作『一流の頭脳』は人口1000万人のスウェーデンで60万部が売れ、その後世界的ベストセラーに。

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