人口65万人「世界イチ住みたい街」に日本が学ぶ事 過疎化に悩む日本の地方の街づくりのヒントに
しかし、昔からずっとそうだったわけではない。現状こそそうではあるが、ポートランドにもほかの都市と変わらない工業化一直線の時代があった。
かつては自動車産業の成長とともに工場や高速道路が増え、環境汚染が進んでいたのだ。だがそれを止めると決断したのはほかの誰でもなく、ポートランド市民だった。1974年には市民の声を受けてポートランドでアメリカ史上初めて高速道路が撤去された。それ以降、ポートランドでは政策的に都市の成長をコントロールし、大きくなりすぎない街づくりを進めてきた。
また1979年に「都市成長境界線」が作られ、オレゴン州の法律により都市と農村・森林のエリアが厳格に分けられた。これにより見境なく郊外に広がる乱開発を防ぐことに成功した。
都市圏全体の公共交通機関を一括して整備することで、自転車を推奨した街づくりも推進した。その結果、ポートランドはアメリカの都市では珍しく、車社会から離れて徒歩や自転車で暮らせる街になったのだ。
車社会を離れて「歩く」視点
ただコンパクトというだけでは、魅力的な街にはならない。コンパクトであることに加えて、「歩きたくなる」街づくりもコンセプトにしている。
その1つが、建物の「ミクストユース化」である。
都市開発の際に、ビルの用途をオフィスや商業施設など1つに限定せず、1階を商業、その上をオフィス、さらにその上を住居やホテルなど“さまざまな空間を混在させる”というのが「ミクストユース」の基本的な考え方だ。
ビルの1階には、できるだけ窓ガラスを多く取り入れ、賑わいを演出するために飲食店や小売店を誘致。ビル横の歩道の幅はできる限り広くし、自転車が停められるスペースを設け、道を通る人たちがくつろげるようなベンチやテーブルも設置した。ビルの用途を多様化することにより、昼と夜、平日と休日で極端に街の人口が変わることなく、つねに人が行き交う街へと変貌した。
それに加え、街並みとの調和を保つための細かいガイドラインも設けられている。例えば歴史的建造物は街の財産として守られているが、新しい建物を古いデザインに合わせず、今らしさも残したモダンな建物を造ることで新旧の建物をうまく混在させることができている。
ポートランドでは都市開発を行う際、建物のテナント誘致を商工会議所が主体となって行い、市がそこに資金を投入し建物の内容を決定することで街並みをコントロールすることができる、ということもこれらを実現するうえで大事な点だ。
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