「以前は商売の方や、繊維関係のお客さんも多かったって聞くね。でも、今はこのあたりに住んで名古屋方面へと働きに出るお客さんが大半かな。マンションも売れていると聞くし、このあたりに住む人がどんどん増えていってる。あとは、高齢の方の病院などの日常使いなど。つまり年々ベッドタウン化しているということ。
ザ・地方の中堅都市という感じで、タクシーの利用は決して多くはない。それでも、走っている台数はそれなりにある。そんなに稼げる地域ではないけど、タクシー目線では最低限の人は動くんよ」
全国ハイヤー・タクシー連合会の調査によれば、岐阜県のタクシー運転手の給与の年間推計額は2021年度で286万円。全国平均が280万円であることを考えれば、平均的な売り上げを確保している地域ともとれる。ほかのドライバーに話を聞いても、「特別よくもなく悪くもない。それが岐阜のタクシーですよ」と明かす者もいた。
秋山さんは定年を前にして、タクシードライバーに転職している。その理由を聞くと、勤めていた県内の繊維関係の会社でリストラの憂き目にあったからだという。
「昔から繊維関係の仕事は不思議なもので、なぜか東海地方に企業が多くてね。名古屋や岐阜はその中心だった。ただ、結局は年々下請けの仕事が多くなって、業績が下がっていった。いつ潰れてもおかしくないと不安があったけど、タクシードライバーになってからはそんなストレスとは無縁だね。それでも、駅前のシャッター商店街を見ると胸が痛くなるよ」
観光客の利用がほとんど期待できないエリア
全国で見ると中間地点に当たる岐阜、愛知県は昔から繊維産業がさかんな地域だった。老舗企業も少なくない。コストの問題から全国で続々と繊維工場が閉鎖していった関係もあり、中小企業などの発注も必然的に大手企業の関連工場などで受けるようになっていったという。関西にある老舗の繊維商社の代表がこう説明する。
「この業界では毎年大がかりな展示会が行われるが、その場所が名古屋や岐阜になることが多かった。実際に老舗の繊維商社なども東海地方に集中している。それに伴い、繊維関連の出張で東海地方に行く機会が多く、だいたいは名駅、岐阜駅、尾張一宮駅あたりに泊まる。
古い業界だから、接待や2次会なども頻繁で、タクシーにはずいぶんお世話になってるね。全国から出張に来る繊維のビジネスマンたちは、タクシー業界にはずいぶん貢献していると思う。ただ、最近では展示会の数も減り、昔よりは出張に行く機会が減っている……」
北口周辺でタクシードライバーが口をそろえたのは、観光客の利用がほとんど期待できないエリアだということだった。
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