イギリスの博士課程の場合は、この聴衆役が外部の大学教授です。前述のように利害関係のない彼らは、客観性を問うので、特定の誘導は困難です。
このように、教授陣は学生を扇動したり、自分の考えを押し付けたりすることはしません。それでは、新しい英知が生まれないからです。つまり候補者にとって「鏡」のような存在で、自主的に問題を解いたものが、客観的な答えとして広く通じるかを確認させてくれます。
現在のウクライナ国家は、1920年に消滅させられたウクライナ人民共和国の理念を多く受け継いでいます。これまで、他国の妨害やソ連邦の圧力によって、自由な議論や情報の伝達は抑圧されてきました。
それでは1991年までの70年以上の断絶から、どうやって理念が蘇ったのでしょう。
そうです。赤く塗りつぶされた大学の図書館には、しっかりと記録が残されていたのです。
教授陣と学生たちはどの時代も、象牙の塔と揶揄されようとも、できるだけ大学の重い扉を閉じていました。
次の未来を担うリーダーを育てる
時代が変わろうとも、過去の英知を基に、客観的に議論し続けていました。大切な記録が焼き払われないように、細心の注意を払い保管し、未来のリーダーを育てるために使っていたのです。
そして70年後、ウクライナという国が復活する時のために、立ち上がるリーダーを門から解き放っていたのです。
しかし、人類は不完全で、失敗も続きます。そのため、大学は自由な議論をやめません。世の中を良い方向に進めたい、志のある若者が自ら育つ機会を、連続して提供する必要があるからです。
世の中には普遍の解決法はありません。今のリーダーたちがやっていることが間違っていても、学生たちには簡単には止められません。しかし、未来は必ずやってきます。
その時に同じ過ちを犯さないように、少しでも世の中を良くする方向に進めるために、準備をするのです。
キーウ大学はこれからも、ずっと赤色のままでしょう。
次回以降は、シベリアにある大学と先生についての話です。
(第2回=9月9日配信予定に続く)
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