東武鉄道がスカイツリーを建設した「納得の理由」 高収益体質につながった「教科書通りの戦略」

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ただ、ソラマチにはオフィスもたくさん入居していますので、この中で比較的利益率が高くなりやすい③の不動産事業と考える方もいらっしゃるかもしれません。

どの考え方も納得できるところがありますが、いずれも惜しいです。正解は、①の運輸事業でした。

出典:『会計クイズを解くだけで財務3表がわかる 世界一楽しい決算書の読み方[実践編]』

東京スカイツリーの設立意図は?

本題に入る前に、そもそも「なぜスカイツリーが建てられたのか」という背景について、東武鉄道の開示資料から読み取っておきましょう。さかのぼること2006年の中期経営計画に目を通してみると、「鉄道事業の収益力を高めるための成長戦略」に関する記述があります。

出典:『会計クイズを解くだけで財務3表がわかる 世界一楽しい決算書の読み方[実践編]』

2006年の資料なので、当然ですが「東京スカイツリー」という名前は見当たらず、「新タワー」という名称で説明されています。過去の資料を見ると、当時の様子もうかがえて興味深いですね。

実は、この中期経営計画を立てる以前の東武鉄道は、2000年頃に多くの不良債権を抱えており、経営状況もかなり苦戦していました。それを受けて2000年~2005年前後に不良債権を整理し、財政状態の立て直しに成功します。

業績を伸ばしていく土台ができあがり、いよいよ企業の成長を描くための事業戦略を立てたのが、この2006年からの中期経営計画となります。

資料からは「鉄道事業の収益力を高めたい」という意図が読み取れます。この収益力を上げるための施策の1つが、「業平橋・押上プロジェクト」という計画です。これが後の東京スカイツリープロジェクトなのですが、当時はまだ東京スカイツリーという名前が決まっていなかったわけなので、新タワー建設予定地の名前となっているのですね。

このように、中期経営計画から、東京スカイツリーの建設が鉄道事業の収益性向上策であると読み取れるのです。

次ページなぜ東京スカイツリーの建設が鉄道業の収益向上につながるのか
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