日本企業の「戦略暴走ケース179編」に何を学ぶか 戦略論は容易なのに実際の戦略は難しい真因

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日本企業の暴走事例179編をまとめた『戦略暴走』。2010年に発刊された本書のはしがきを、抜粋・編集してお届けします(写真:Black Salmon/PIXTA)
偉大な経営者たちの着眼点を知り、日本経済を牽引してきた110ケースについて学ぶ三品和広著『企業成長の仕込み方』がこのほど出版された。本書を含む『高収益事業の創り方』『市場首位の目指し方』の全3巻『経営戦略の実戦』シリーズには、日本企業の事例464ケースが収録されている。
このシリーズには含まれていないが、シリーズの発端となったロングセラー書籍がある。日本企業の暴走事例179編をまとめた『戦略暴走』だ。2010年に発刊された本書のはしがきを、抜粋・編集してお届けする。

戦略論は平易である

戦略論は平易である。20歳前後の大学生でも、戦略論の論理構成は十分に理解する。ところが、実戦の戦略となると急に難度が上がるから不思議である。それこそ、還暦を迎えた百戦錬磨のつわものたちが次から次に間違える。

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間違うのは、企業を取り巻く状況が千差万別で、しかも刻々と変わっていくのに、変化や相違を的確に読み取る術を戦略論が教えてくれないからである。これは戦略論の欠陥と素直に認めるべきではなかろうか。そう考えた日から、この本が始まっている。

奇しくも同じ類の欠陥は、縁台将棋の世界でも耳にする。せっかく定跡を覚えても、宿敵に負けてしまうことがあるというのである。問題は、対戦相手が悪賢いのかヘボなのか、理由はともあれ、定跡にない手を繰り出してくるところにある。

そうなると歓喜と意気消沈を繰り返し、たまには「待った」をかけながら、定跡無縁の泥仕合にのめり込むことになる。

そういう将棋の世界で、プロ棋士は棋譜の研究を欠かさないという。実戦の記録を古今東西から取り寄せて、勝敗が分岐した局面を突き止める努力を来る日も来る日も重ねるというのである。

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