日本企業が成功させた「戦略実例」から教訓を学ぶ 「経営戦略の実戦」シリーズ464事例から考える
実務の発想と戦略の発想の乖離
この『経営戦略の実戦』シリーズ(全3巻)は、企業の前途を左右する経営幹部候補生専用の教科書と位置づけている。
言うまでもなく、粋狂で教科書を書く物好きはいない。以下では本シリーズの必要性を、需要面と供給面に分けて確認したうえで、一貫した特徴をまとめておく。
まず需要側から始めよう。戦後の日本では追い風を帆で受けていればよく、極言するなら、誰も経営戦略など必要としなかった。
それが、1990年代に入って一変する。日米構造協議に引きずり出された霞が関が護送船団の調整役から降りてしまい、日本企業は荒れ狂う大海に放り出された。そして地価と株価の暴落に見舞われ、含み益という守護神まで失った。
輸出攻勢に出ようにも、未曾有の円高が立ちはだかる。2000年頃に日本企業が雇用という聖域に手をつける一方で、企業内大学を設けて選抜教育に乗り出したのは、存亡の危機を痛切に意識したからであろう。
こうして経営幹部候補生が選ばれると、教室では悪戦苦闘が始まった。日本企業が白羽の矢を立てた幹部候補生は仕事と管理に精通する組織人で、そもそも自らの意志に基づいて経営の舵を切るという概念を受けつけない。
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