日本企業が成功させた「戦略実例」から教訓を学ぶ 「経営戦略の実戦」シリーズ464事例から考える
狭い部門内で異動を繰り返してきたせいか、自社の打ち手を見ているようで見ていないし、ましてや戦略と業績の対応関係も見えていない。
打ち手の成否が確定するには時間がかかり、その間にはさまざまなことが起こるため、仕方ないと言えば仕方ないが、実務のエースが仕事を通して身につけた処世訓は戦略の発想とかけ離れており、まさに出帆は多難であった。
苦戦が続く教室の外ではグローバリゼーションが容赦なく進み、経営すべき企業は複雑性を増していく。
経営の神様と称えられた松下幸之助ですら社長として経営したのは2010年価額の5000億円までなのに、売上高が5000億円水準を超える企業が日本には300社以上もひしめくようになった。
一社員から選ばれた経営者が「神様」を超える試練に立ち向かわなければならない時代をいかに乗り切ればよいのか。こういう時代だからこそ手に入る「知識の体系」を武器として身につけるしか、乗り切る方法はないのではないか。
そこに、私が構想する教科書のニーズがある。
なぜポーターの教科書では足りないのか
次に供給側に目を転じてみよう。経営戦略の教科書なら掃いて捨てるほどあるが、幹部候補生のニーズに応えるものは見当たらない。
アカデミックな教科書の金字塔と目されるマイケル・ポーターの『競争の戦略』も、実はハーバードMBAの1年次に向けたものであり、「業界と競合の分析手法」という副題が示唆するように、分析に焦点を合わせている。
だからこそ、ウォール街やコンサルティング業界で働くことを夢見る若き学生たちから絶大な支持を受けてきたのである。
ハーバードMBAの2年次用に書かれた『競争優位の戦略』は「より高い業績の出し方と保ち方」と副題に掲げるが、当時は30代のポーターがHOWまで書き切ったとは言いがたく、前作ほど活用されていない。
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