「帰国できない」海外旅行、PCR検査の高すぎる壁 制限緩和はまだ足りない、本格回復はいつ?
こうした中、業界団体の日本旅行業協会は、進まない規制緩和にしびれをきらし「海外旅行再開宣言」を掲げている。7月には主要駅でチラシやうちわを配り、SNSキャンペーンも実施。海外旅行が再開していること、旅行できる環境が整っていることを消費者に呼びかけた。
高橋広行会長は、業界には中小企業が多く、公的支援が必要なこと。融資を受けても返済できずに倒産する例が急増していることなど、厳しい現状を指摘。回復のカギとなるのが水際対策だと語る。
「これほど厳しい制限を課している国は世界ではまれ。入国者数上限の2万人は以前の14万人からすると論外。PCR検査も壁で、企業の海外出張や旅行が進まない要因だ。ビザも免除してコロナ前に戻すべき。制限を即時撤廃し、開かれた日本にしなければならない」(高橋会長)
各社も需要喚起に向けた策を打ち出す。大手のエイチ・アイ・エスは現地支店を活用したサポートを行う。同社でも人気のハワイはPCR検査センターを設置。感染者が発生した際には、ホテルや航空券の手配などもサポートする。旅行前に感染した場合に備え、キャンセル料の70%を補償する保険も提案している。手厚いサポートで差別化を図る考えだ。
短期の海外渡航については制限を緩和
行政も何もしていないわけではない。足元では緩和の動きもみられる。厚生労働省は8月15日、海外へ短期渡航する際、現地出発の72時間以内なら国内で受けた検査の陰性証明が有効とした。この変更によって、アジア圏をはじめ、グアムなども旅行しやすくなったといえる。
ただ、国内の検査結果が帰国時に有効になる奇妙な運用方法に、河野太郎デジタル大臣はツイッターで「これが有効ならば、そもそも帰国時の検査は不要ではないか」と疑問を呈している。
まだまだ課題山積だが、今後の海外旅行はどんな回復シナリオをたどるのか。海外の現地体験型ツアー予約サイトを運営するベルトラの二木渉社長は、重要なのはライトユーザーの動向だと語る。現在、海外旅行に行くのはどうしてもここに行きたいという目的志向のユーザーに限られており、ライトユーザーが反応するのはアジアだという。
「北米や欧州の再開もあるが、アジアでは台湾や香港が規制されている。こうしたところが再開されるのが、海外旅行の大幅な回復のきっかけになると考えている」(二木社長)
コロナ禍からすでに2年以上が経過した。視界不良の中で、中小旅行会社の体力は限界を迎えつつある。「旅行業は結局、政治の動向次第なんですよ」。業界関係者が語るように、各種規制は企業の努力ではどうすることもできない。
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