「帰国できない」海外旅行、PCR検査の高すぎる壁 制限緩和はまだ足りない、本格回復はいつ?

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ところが8月中旬、再開第2弾となる欧州のツアーでも陽性者が判明する。現地での隔離は不要だったが、日本に帰ることができない。添乗員は参加者の安全面も優先し現地にとどまることになった。陰性の参加者は、提携する現地事業者と協力して帰国させている。

添乗員付きの海外ツアーを企画・販売するユーラシア旅行社のパンフレット。歴史や文化など、よりテーマ性のあるツアーを提供しているのが特徴だ(記者撮影)

この2本のツアーでは、コロナによる延泊や追加の添乗員の派遣費用は顧客に請求しなかった。あくまで顧客の安全を優先した対応だ。顧客が加入する保険ではカバーできない範囲もあるため、旅行会社の持ち出しが増えて赤字になってしまう。

旅行社は赤字が続く可能性も

ユーラシア旅行社・旅行事業部の山田則子副本部長は「速やかな再起に向けて努力しているが、疑問の残る水際対策に翻弄されている。本来提供すべきお客様の安心安全をどう確保するべきか、日々苦悩している」と語る。

「陽性なら帰国できない」リスクは旅行者のマインドに大きくのしかかる。休み明けに仕事に復帰できない可能性がある中で、積極的に旅行に出かける現役世代は少ない。

仮に1週間ほどの延泊となれば、航空券の変更料金、ホテル代、食事代で30万~40万円かかることもある。現在、日本政府は1日当たりの入国者数を上限2万人に制限(コロナ前は約14万人が入国)している。希望通りに航空券を確保できないケースもある。旅行者の負担は大きい。

ユーラシア旅行社の井上利男社長は複雑な胸中を明かす。「欧州やアメリカでは人々は自由に行動し、検査も受けていない。ただ、その感覚は日本人に合わないだろう。コロナが怖いと日々植え付けられてきた影響は大きい」。

「今はおカネよりも安心安全を確保することを使命だと思ってやっている。旅行業が元に戻るにはもう少し時間がかかる。会社は毎月のように赤字になるので、どこまで踏ん張れるかは世の中のコロナに対する感覚次第。政府ももう少し耳を傾けて対応してほしい」(井上社長)

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